傑作と評された前作『ユー・クロス・マイ・パス』から約2年、11作目のアルバムを完成させたシャーラタンズ。今作でプロデュースを務めたのは、キリング・ジョークのベーシストでもあり、ポール・マッカートニーやプライマル、ヴァーヴ等のプロデュースも手掛けるユース。シャーラタンズ作品では、以前にリミックスを手掛けたこともある。一見、異色のタッグにも思えたけれど、アルバムを聴けば、うまくハマった組み合わせであり、新しいエッセンスも加わっているのがわかる。バンド側が望んだのは、「ヨーロピアン・ウィンターを思い起こさせるサウンド」だという。完成したのは、柔らかな流れのなかに、美しいきらめきやドラマがあって、シンプルなようでいてとても重厚なサウンド。きらきらとしたポップさを放つグルーヴに、ティムの少年のような歌声が軽やかに踊っている。どこかノスタルジックで、同時に新鮮で無邪気なパワーが感じられる音で、アルバムを聴き進めながらも、わくわくしてしまう。毎作で言っている気がするが、長いキャリアを誇りながら、この夢見るような音の感覚を失っていないのはすごいことだと思う。(吉羽さおり)