「僕らの未来は希望に満ちている」(“ウィー・アー・ゴールデン”)という宣言を皮切りに、MIKAは自身のトラウマティックな少年時代を復讐のように昇華・普遍化していく。しかし、それらは輝かしい未来予想図ではなく、予め失われた未来であることを彼も私達も知っている。本作から強く感じるのはそんな、ポップ・ミュージックを介した彼と私達の共犯関係である。本作中でも特に感動的なナンバー、「君は僕にとってかけがえのない人/でも君が知ることはないだろう」と歌われる“アイ・シー・ユー”のように、未来は最初から存在しないのだということを、彼も私達も知ってしまっているのだ。前作『ライフ・イン・カートゥーン・モーション』が文字通り現実をカートゥーン=ファンタジーの中に埋没させて逃避する機能を持っていたとしたら、本作はなぜ彼や私達がファンタジーを必要とするのか、その哀しみの理由を描ききっている。MIKAのポップ・ソングは、遂にここまで来てしまった。(粉川しの)
宿命のポップが鳴った
ミーカ『ザ・ボーイ・フー・ニュー・トゥー・マッチ』
2009年09月16日発売
2009年09月16日発売
「僕らの未来は希望に満ちている」(“ウィー・アー・ゴールデン”)という宣言を皮切りに、MIKAは自身のトラウマティックな少年時代を復讐のように昇華・普遍化していく。しかし、それらは輝かしい未来予想図ではなく、予め失われた未来であることを彼も私達も知っている。本作から強く感じるのはそんな、ポップ・ミュージックを介した彼と私達の共犯関係である。本作中でも特に感動的なナンバー、「君は僕にとってかけがえのない人/でも君が知ることはないだろう」と歌われる“アイ・シー・ユー”のように、未来は最初から存在しないのだということを、彼も私達も知ってしまっているのだ。前作『ライフ・イン・カートゥーン・モーション』が文字通り現実をカートゥーン=ファンタジーの中に埋没させて逃避する機能を持っていたとしたら、本作はなぜ彼や私達がファンタジーを必要とするのか、その哀しみの理由を描ききっている。MIKAのポップ・ソングは、遂にここまで来てしまった。(粉川しの)