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今年7月、アニメ『フェルマーの料理』の主題歌に“メイラード”が起用され、そこでこの奇才に触れた人も多いはず。OSHIKIKEIGOのポップスは耳心地のよいキャッチーなグルーヴに独特のトリップ感覚を伴う。『BOARDING PASS』と名づけられた今作は、そんな感覚的な旅に出るための搭乗許可証なのかも。ソングライティングもトラックメイクもすべてセルフプロデュースで制作するOSHIKIKEIGOの楽曲は、渇きも湿度も併せ持つメロディラインの良さに耳を奪われるが、予測不能なリズムにもまた引き込まれる。突然歌詞の一部を強調するかのように強く刻まれるビートなどは、まるで小説や論文につく傍点のようでハッとさせられることしきり。そして“モナリザ”や“オッドアイ”“ユダ”といった楽曲のモチーフからもイメージできるように、彼の歌は魅力的な抽象画のように聴く者の想像力を掻き立てる。この作品のリード曲が“喩えて”というタイトルなのも示唆的だ。これはとても中毒性の高いポップ。聴き逃す手はない。（杉浦美恵）（『ROCKIN'ON JAPAN』2025年11月号より）
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