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愛でながら育む想い。時には誰かの喜ぶ顔を思い浮かべながら、もしくは誰にも見つからないようにこっそりと、心の中に咲く花へ水をやる。その花をいとも簡単に踏み潰されたり、まるで社会に存在することが悪であるかのように刈り取られたり。そんな日々の中では時に自分の想いを持つこと自体が馬鹿馬鹿しくなり諦めそうにもなる。それでも、また芽は生えてくる。そうやって、人は人生を続けていく。藤井 風の新曲は「花」を生命の象徴として描くところから始まるが、主題歌となっている『いちばんすきな花』(『silent』のプロデューサー・村瀬健×脚本家・生方美久×劇伴・得田真裕によるヒューマンドラマ)の内容と同様、人それぞれの心の機微に焦点が当てられていく。本作のプロデューサーはA. G. Cookで、低音やビートなどの鳴りが美しく研ぎ澄まされていて音の振動が心地いい。「一つひとつの音」に耳を傾けたくなるサウンドプロダクションの中で「一人ひとりの《内なる花》」を尊いものとして歌う、極上の一曲。(矢島由佳子)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年12月号より抜粋)
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