質実剛健のセルフ・タイトル

ラム・オブ・ゴッド『ラム・オブ・ゴッド』
発売中
ALBUM
ラム・オブ・ゴッド ラム・オブ・ゴッド

3作連続で全米チャート3位内に送り込んでいるUSメタルコア/グルーヴ・メタルの王者が、ここに8thアルバムを堂々完成。前作以降、バンド本体はバーン・ザ・プリースト名義で自身のルーツをつまびらかにしたカバー・アルバム、さらにマーク・モートン(G)は豪華ゲスト・ボーカル陣を迎えたソロ作(本作と同時に続編的なアコースティックEPも発表)を出し、いずれもファン必聴の高水準アルバムであった。

そして、バンドとしては過去最長の5年というブランクを経て、プロングなどに籍を置いていたアート・クルーズ(Dr)を迎え、新体制で作り上げた本作。正直、パワーと技巧に長けた前任ドラマーであるクリス・アドラー脱退の穴は大きかったものの、アートは違和感なくラム・オブ・ゴッドの音像に溶け込んでいる印象だ。肝心の作風に関しては緩急鮮やかに攻めるよりも、重心を低くしたミドル・テンポの曲調が多く、一語一音を精査した研ぎ澄まされたヘヴィネスで聴き手を狙い撃ちしてくる。ポリティカルなメッセージ性の強い歌詞を含めて、じっくり向き合いたい強力作と言えるだろう。個人的には聴けば聴くほど、楽曲パワーに引きずり込まれるスルメ・アルバムという感触を抱いた。また、“ポイズン・ドリーム”にはジェイミー・ジャスタ(ヘイトブリード)、“ルーツ”にはチャック・ビリー(テスタメント)という2名のボーカリストを招き、特に後者はスラッシーな疾走感で華を添えている。

とにかくセルフ・タイトルからも分かるように、バンドの揺ぎないアイデンティティとポテンシャルを遺憾なく発揮した無駄のないサウンドに、これ以上ない説得力を感じさせるのだ。小手先よりも、内実の伴った桁違いのエモーションに胸をえぐられる。(荒金良介)



各視聴リンクはこちら

ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。


ラム・オブ・ゴッド ラム・オブ・ゴッド - 『rockin'on』2020年8月号『rockin'on』2020年8月号
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする