コブシのロックンロール

マンドゥ・ディアオ『ギヴ・ミー・ファイア』
2009年03月04日発売
ALBUM
マンドゥ・ディアオ ギヴ・ミー・ファイア
マンドゥ・ディアオが日本だけじゃなくドイツでも人気と聞いて「へえそうなんだ」と思ってたが、本作を聴いてすごく納得がいった。彼らの鳴らしている音は、スタイルこそ王道のロックンロールなんだけれど、その根っこの部分には男臭い、いうなれば演歌っぽいソウルがある。メジャーコードを使っていても、どこか哀愁を感じさせる響きを持っている。それがまるでうどんのダシのように効いている。UKで完全スルーなのは、ひょっとしてロンドンっ子から見たら田舎臭く見えるからなのかな。でも昔っから日本とドイツはこの手の悲哀のメロディに弱い。グスタフの力強い声とビョルンのソウルフルな歌が生み出すハーモニーが、それを見事に昇華させている。

いつの間にかの5作目のアルバム。四つ打ちのドラム・ビートでディスコティックな狂騒を生み出すリード曲の“ダンス・ウィズ・サムバディ”、ポスト・パンク・テイストの“ギヴ・ミー・ファイア”、ブラック・サバスとクラウス・シュルツを真正面からぶつけたような“ユー・ゴット・ナッシング・オン・ミー”など、曲調はかなりバラエティに富んでいる。そして、そのことが逆に、マンドゥ・ディアオとは何であるか――ということを証明している。グスタフとビョルン2人に共通する独特のコブシの効いた歌い回しがあれば、全てマンドゥ節に聴こえるのだ。なかでも「♪ウッ ハッ!」とジンギスカンみたいな掛け声が入る“グロリア”や、大仰でドラマティックなラスト・チューン“ザ・シャイニング”など、やたら時代がかった曲がいい。古臭さが一周して唯我独尊の持ち味になっている。(柴那典)
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