ブルースハープが印象的なヒロト作の“ペテン師ロック”は、どことなく往年の日活無国籍アクション映画を思わせるようなハードボイルドな無頼の叙情を漂わす。歌詞はフィクショナルな設定のようで、2016年という現実の社会状況の切羽詰まったメタファーのようでもあり、さまざまな解釈が可能になっている。歌詞も含め無駄な音が一切入っていないので、リスナーの想像力が試される。
真島作の“ハードロック”は、アパートの隣の住人がハードロックを大音量で聴いているという、まるでマイケル・ジャクソンの“ブラック・オア・ホワイト”のようなシチュエーションの歌詞をシンプルなハードロックで歌う。前曲よりさらに言葉少なな歌詞は、裏読みさえも不可能と思わせるストレートさ。
シンプルに徹した演奏は、あっという間に聴き終わってしまう。ライブでほかの曲と間髪入れず鳴らされることで、これらの曲は輝きを増すはずだ。(小野島大)