若者文化の出現

ザ・ビートルズ『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』
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ALBUM
ザ・ビートルズ ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル
1964年、65年。ビートルズの人気が絶頂期に達していた頃の唯一のライヴ盤である。1977年にリリースされた13曲に、4曲の未発表曲を加えた17曲入りでの初CD化だ。

LAのハリウッド・ボウルで行われた計3回のライヴからの抜粋である。当然完全盤が期待されたわけだが、残念ながらそれは叶わなかった。しかしオリジナル・マスターからのリミックスとリマスターが入念に行われ、音質はかなり向上。オリジナル盤はブートに毛が生えた程度だったが、今回はヴォーカルが際立ち、演奏もクリアになった。ライヴ・バンドとしての彼らの真髄をうかがうには、十分とは言えないまでも、まずまず満足できるものになっている。とはいえ元はわずか3トラックの録音である。しかもPAもモニター環境も現在では考えられないほどプアな時代のスタジアム・ライヴで、そのうえ絶頂期にあったアイドル人気ゆえ、ファンの絶叫にかき消され、観客はおろか彼ら自身もはっきりと演奏を聴くことはできなかったとされる。

だがそれでもこの音源が必聴と言えるのは、まだ若く無鉄砲でエネルギーに満ち溢れていたビートルズ、ファン、ロックンロール、つまりはまだ認知され始めたばかりの「若者文化」そのものの息吹が感じられるからだ。それはつまり、若者の力と団結が世界を変えるかもしれないという予感である。エルヴィス以降顕在化したこの動きを、ビートルズと、その忠実なファンたちはさらに大きなものとした。その未分化で洗練されない生々しく強烈な生命力こそが、本作の最大の価値である。(小野島大)
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