これは大きな変化の予兆なのか

スリップノット『.5: ザ・グレイ・チャプター(2CDスペシャル・エディション)』
発売中
ALBUM
スリップノット .5: ザ・グレイ・チャプター(2CDスペシャル・エディション)
問題作である。

一言で言ってしまえば、従来のスリップノットらしい、ラウド・ロックとしてのカタルシスはやや薄い。もちろん彼ららしいすべてを破壊し尽くし止まらない激烈なバースト・ビート、ガチガチのギター・クランチ、早口でまくし立てられるおびただしい言葉、デス・ヴォイスといった要素も聴けることは聴ける。だが耳に残るのは、クリーン・ヴォイスに近い声でメロディアスに歌いあげるコリィ・テイラーのヴォーカルであり、それをドラマティックに盛り上げる楽曲である。初期衝動的な勢いやエネルギーのまま突っ走るというより、かっちりとした構成で聴かせる様式的な曲の方が印象に残る。

がなりたてるというより、いつになく「歌っている」印象が強いコリィのヴォーカルは、アルバム・タイトル通り故ポール・グレイ追悼の感情もそこには込められているはずで、そう思えばこのアルバムを単なるフラストレーションの発散的なカタルシスに回収させたくなかった理由はよくわかる。“カスター”から短いSE的な一曲を挟んで“ザ・ネガティヴ・ワン”と連なるスラッシーな流れは彼ららしいが、終曲“イフ・レイン・イズ・ホワット・ユー・ウォント”はなんとも重苦しい、すっきりしない感情を残して終わる。

だがその割り切れなさ、もやもやしたものを抱えながら続く日常の鬱屈こそが、このアルバムでスリップノットが描きたかったものなのだろう。この路線がいつまでも続くとも思えないが、非常に複雑に内向して屈折した感情を内包した作品だけに、噛み砕き消化するまでにはそれなりの時間がかかりそうだ。(小野島大)
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