ドキュメンタリーの中で、「JAY-Zは天才だ」と言うライムフェストにカニエが「俺、お前から天才って言われないことに苛立ってる。それって笑える」と微妙な表情で笑いながら叫ぶシーンがある。
自分の才能を自覚しているから評価がほしい、でもその評価を欲しがる自分を冷めた視線で見ている。カニエの中には常にその2人がいて、その間で板挟みになっている。
その2人のカニエを最初から当たり前のように認め称賛してきた母ドンダがカニエにとってどれだけ大切だったかが非常によく分かる。
カニエのすべてを肯定した上で、「巨人は自分の姿を鏡に映せない」「だから地に足をつけながら舞い上がるの」と、内なる2人のカニエに対するこれ以上ない的確な言葉を投げかける。
その母を失ったカニエにとって、何かを問いかけるべき相手はもはや神しかいないということがよくわかる。(山崎洋一郎)
カニエのことを本当に知れる、感動的で圧倒的な情報量の映像だった。Netflixのカニエ・ウェストのドキュメンタリーは秀逸
2022.03.12 12:00