「究極のロック・ドラマー」に選ばれたアーティストはこちら。
マット・チェンバレン
ブルース・スプリングスティーン、ボブ・ディラン、ザ・フー、カニエ・ウェスト、フランク・オーシャン、吉井和哉など、これ以上は無いという錚々たる面々のツアーや録音に参加。91年にパール・ジャムに一時在籍したものの、すぐに脱退した後、セッション・ドラマーとして歩んできたマット・チェンバレンのキャリアは、控え目に見ても世界有数のものだろう。幅の広いジャンル、個性の音楽家達に合わせるだけの器用さがあることは間違いないが、一方ではっきり彼のものと分かる記名性の高いグルーヴも持ち合わせた、稀有なドラマーである。
そんな彼の録音物で最初に衝撃を受けたのが、初期のフィオナ・アップルとの仕事。最新作が世界を揺るがせているフィオナだが、96年に19歳でシーンに登場したときからその表現の切実さ、感情の純度と強度が桁外れた傑物であった。ただ、だからこそ、歌唱も鍵盤も感情に合わせてフリーキーに揺らぐことも少なくなかった。そんな歌世界にグルーヴと共に統一感あるリズム基盤を築いたのが彼のドラミングである。
特に2作目『真実』では、前作から目を見張る成長を果たしたフィオナの歌を立てながら、曲の抑揚を完璧にコントロールする全能ぶりを遺憾なく発揮している。フィオナの進化を先導しながら、自らの名を業界に轟かせる仕事ぶり。これが世界に求められるプロだということを教えてくれる1枚だ。(長瀬昇)
ロッキング・オンが選ぶ「究極のロック・ギタリスト」特集掲載号は、5月7日発売です。ご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。