昨夜、社長の渋谷から松村さんが亡くなったことを聞いた。すぐに副編に電話をして次号のロッキング・オンでどんな追悼の記事を作るかを打ち合わせて、このWebサイトで訃報を出す段取りを組んだ。ロッキング・オンの編集長になってから20年以上ずっと、ロックスターやミュージシャンが亡くなったという知らせを受けるたびにやることと全く同じことを、僕は松村さんの死の知らせを受けてから今もやっている。こうして自分のブログに悔しさを綴る文章を書いていることもそうだ。中学2年生の時からロッキング・オンを読み、松村雄策の狂って冷めた原稿を読み、白昼夢のような世界に誘い込まれ、そしてそんな文章の書き手に憧れを抱いていた僕にとっては、それは、変な言い方だけど、自然なことだとしか思えない。
僕はビートルズをろくに聴いたこともないまま、松村さんの原稿でビートルズを掴んでいた。ドアーズもそうだった。モンキーズやバッドフィンガーなんか、一度も聴いたことなかった。でもそれがどんな世界なのかを僕は松村さんの原稿の世界の中で深く知っていた。
ロッキング・オンの入社面接を受けた時、渋谷社長はあまり乗り気ではなかったが松村さんが「面白そうだ」と言って僕を推してくれたらしい。渋谷社長がそう言っていた。非常に嬉しかった。でも入社してから僕が松村さんにしたことといえば、原稿の催促の電話ばかりだった。なんか、申し訳ないような気持ちになっている。
もう催促はできないが、もっと原稿を書いてもらいたかった。松村さんの文章の切れ味はいわゆる音楽評論家ともエッセイストともちがう次元にあって、それは今年のロッキング・オン『ビートルズ特集号』でも全く鈍っていなかった。
松村さん、安らかに。ご冥福をお祈りします。(山崎洋一郎)
松村雄策さん、安らかに
2022.03.13 15:57