フライング・ロータスは「見たことのない何か」ではない

フライング・ロータスは「見たことのない何か」ではない

4月21日発売のフライング・ロータス『コズモグランマ』。
本日、サンプル盤が届いた。改めて、すさまじい作品だ。
アルバム1枚、50分ちょっとの作品なのだが、
ちょっと信じられないくらいの情報量。
ジャズも、ハウスも、ヒップホップも、テクノも、
すべてがカオティックにめぐり合い、
渾然一体となってグルーヴを生み出していく。

フライング・ロータスことスティーヴン・エリソンは、
ご存知のとおりジャズ・ミュージシャンの家に生まれ、
(本作では従兄弟のラヴィ・コルトレーンがサックスを吹いたりもしている)
ヒップホップ・カルチャーを通過して、ラップトップ・ミュージックへとたどり着いた。

そんな彼の遍歴、もっといえばルーツから現在まで至るその遺伝子が、
そのまま音となっている。それがこの『コズモグランマ』だ。

だから、このアルバムは「新しい」というよりも「懐かしい」に近いような、
感情の奥を直接えぐるような苦味をもっている。
たとえばトム・ヨークがヴォーカルを提供している
“...And The World Laughs With You”は7曲目に収録されている。
「君は世界に笑われている」というタイトルからして象徴的だが、
スティーヴンが見つめているのは光速で広がる未来の先っぽなんかではなく、
いまこの瞬間の自分と世界のかかわり合いである。

当代最高のビート・メイカー/プロデューサーという見方も間違ってはいないのだが、
『コズモグランマ』はその音が最先端を走っているからすごいのではない。
むしろ最先端の材料を使いながら、
圧倒的な普遍性と内在性にリーチしているところがすごいのだ。
だからそう、陳腐なたとえだけれど、宇宙なのである。
いつも見ているし、そこにあることは何よりも明白なものなのに、
とてつもなく大きく、遠い存在。
フライング・ロータスが本作で描き出したものとはまさにそれだ。
このアルバムの「宇宙」は聴く人ひとりひとりのなかにある「宇宙」と
シンクロして、普段決して目に見えないはずの世界をさらけ出す。

そのフライング・ロータス、来月には来日も決まっている。
昨年のWarp20でも観たけど、このアルバムを聴いてしまった後だと、
とんでもないものを期待してしまう。しかも今回は小さなクラブでのショウだし。
詳細は以下から。これはぜひ体験してほしい。(小川)

http://www.beatink.com/Labels/Warp_Records/Flying-Lotus/Brainfeeder2010/
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