現在発売中のロッキング・オン6月号では、ベス・ギボンズのソロデビュー作『ライヴス・アウトグロウン』徹底解説するロングレビューを掲載しています。
以下、本記事の冒頭部分より。
文=つやちゃん
94年に『ダミー』でポーティスヘッドがデビューしてから、ちょうど30年が経った。ダビーに振動するブレイクビーツに乗って、痛々しく悲劇的に披露されたベス・ギボンズのボーカル。瞬く間に大きなセールスと評価を手に入れた彼女らは、その後もヒップホップの方法論を駆使しながらシンガーソングライター的な語り口を導入することで、09年までにわたって唯一無二の音楽を生み出した。
時は経ち、トリップホップやダウンビートと称されたポーティスヘッドの世界観は、近年さらなる再評価を受けている。メジャー/インディ問わず女性ボーカリストへの注目やゴスの再解釈が興る中で、ビョークやコクトー・ツインズといった神秘的なアーティストと並んで、ベス・ギボンズの存在、あるいはポーティスヘッドをはじめとしたブリストルサウンドへの視線がまた熱気を帯びてきているように思う。
そのような機運の中で、ついにベス・ギボンズが動いた。5月17日に初のソロアルバムをリリース、さらに7月27日にはフジロックにも出演する。そもそも彼女は13年の時点でドミノ・レコーズと契約しており、ソロ作品の発表もずっと噂されてきた。けれども、いっこうにリリースの報がなく、今回10年以上の時を超えてようやく届けられたのが今作『ライヴス・アウトグロウン』なのだ。
02年にラスティン・マンとの共作『アウト・オブ・シーズン』を作り上げ、一昨年にはケンドリック・ラマーのアルバムに客演したこともあったが、ベス・ギボンズ名義としての完全なソロ作品は今回が初めて。まさしく待望の、と言ってよいだろう。
今作について、彼女は次のようにコメントしている。「いつものように、このアルバムは私の内面に起こっていることを反映しており、私の50代は、新しくもあり古くもある視野をもたらしました。家族や友人、そしてかつての自分との別れの時があり、歌詞は私の不安や眠れない夜の熟慮の結果を映し出しています。それゆえに『ライヴス・アウトグロウン』なのです」と。
デビュー当時30手前だったベス・ギボンズは今では齢60近くとなり、自らの実存に対する捉え方が変化を帯びてきた。『ダミー』の世界観はいわばフィクション性を秘めていたかもしれないが、『ライヴス・アウトグロウン』は、迫りくる人生の終盤を踏まえたうえでの諦念や恐怖といったリアリティが増しているように聴こえるのだ。(以下、本誌記事へ続く)
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