ソロデビューから早5年、3枚のソロアルバムはすべて全英1位を獲得し、ツアーをやれば軒並みソールドアウト、数々のフェスティバにヘッドライナーとして出演するなど、第二の全盛期と呼ぶに相応しいソロキャリアを築き上げてきたリアム・ギャラガー。
まさか彼がソロとして、これほど力強くオアシスとは別の道を歩むことになるとは予想していなかったが、ロックンロールシンガーとしての唯一無二の地位を確立したからこそ、リアムの道とオアシスの道はついに一本の王道として繋がれようとしているのかもしれない。彼がたったひとりで成功させたネブワースは、その何よりの証左だったと思う。
2022年6月3日、4日の2日間にわたり、のべ17万人を集めて開催された、リアム・ギャラガーのネブワース公演の全貌を捉えたライブドキュメンタリー、それが『リアム・ギャラガー:ネブワース22 』だ。『オアシス:ネブワース1996』(2021年)の続編とも読み取れるネーミングだが、本作はリアムがオアシスからネブワースを「継承」する物語であるという点で、続編という捉え方はある意味正しい。
劇中でリアムは何度も26年前を振り返りながらひとりでネブワースをやる意味を自問し、驚くほど丁寧に準備を重ね、「今こそやるべきだ」という確信を深めていく。もちろん、大群衆で埋め尽くされた広大なフィールドの空撮映像や、そこに轟くリアムの無敵の歌声、感極まった大合唱の連続といったライブ自体の記録も凄まじくエモい。しかしそんなライブ映像以上に本作において重要なのは、ネブワースの名に恥じない自分たろうとひたむきに努力するリアムの姿であり、リアムへの信仰やネブワースへの興奮を通じて、最終的には自分の人生について語り始めるファンの姿だ。
極論すれば、ネブワースの主役はリアムやオアシスではない。今も昔も主役はそこに集った名もなき「人々」だ……それが『ネブワース22 』、『ネブワース1996』に共通した大前提だ。だからこそリアム(オアシス)にとってネブワースは特別なのだし、コロナ禍で「集えない」歳月を経験した私たちは、さらにその象徴的意義を実感できるはずだ。 (粉川しの)
リアム・ギャラガーの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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