「コロナのおかげで生まれたアルバムじゃないけど、誰かに指図されることもなく、ただ曲を書くためだけにオフの時間を兄貴と一緒に過ごすっていうのは、ホントに4、5年ぶりだった。
わたしも兄貴も凄くやる気になれて、そこがめっちゃ良かった」
世界中から注目を集めるのは、どんな気分だろう。その一挙手一投足がたちまち拡散され、噂され、評価されてしまうのは、どれほど苦しいことなのだろう。ビリー・アイリッシュがたった今、直面しているのはそうした事態だ。ポップ・スターに憧れる若者はいつの時代も大勢いるが、実のところ、その華やかな世界の舞台裏やプライベートまでが瞬く間に消費されてしまうのが現代である。
破格の成功を収めたデビュー・アルバムの後に訪れた苦悩を綴った2作目――世界が待望したアルバム『ハピアー・ザン・エヴァー』は、そうした昔ながらのポップ・スターの物語を踏襲しつつも、ベッドルームの暗がりから生まれた彼女だけの音楽を守り抜いているようにも聞こえる。その引き裂かれた感覚を生々しく封じこめながら、しかし美しい光を反射する新作の秘密に迫るのが、以下のインタビューである。
驚くほど飾らないビリーがここにはいる。その姿は危うく、限りなくタフにも見える。前後編にわたって、今この瞬間の彼女のリアルをお届けしよう。まずは新作が生まれた背景、テーマ、そして自身の身体を自身で扱うことについて。 (木津毅)
ビリー・アイリッシュの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。