N.W.A.伝記も大当たり。マイルス・デイビス伝記映画+ハンク・ウィリアムス映画も観た。音楽もの伝記映画まだまだ続く。
2015.10.15 10:30
NY映画祭を締めくくった、マイルス・デイビスの伝記映画"Miles Ahead"を観た!
こちらが予告編。
とにかく、最近は音楽ものの伝記映画が多い。
N.W.A.の伝記映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』(12月19日に日本公開!)はこの夏公開されて大当たり。制作費2800万ドルで作られて、アメリカ国内だけで興行収入が1億6000万ドル。全世界では、約2億ドルもの記録を達成。音楽ものの伝記映画としては歴代1位を記録。ちなみに、2位は、ジョニー・キャッシュの伝記映画『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(2005年)だ。
最近では、ブライアン・ウィルソンの伝記『ラブ&マーシー終わらないメロディー』も公開されたし、『ジェームス・ブラウン〜最高の魂(ソウル)を持つ男〜』も公開された。まだまだ音楽ものの伝記映画ブームは続く。
マイルス・デイビスの映画を監督し、主演し、脚本まで書いたのは、ドン・チードル。最初は配給してくれるスタジオも見付からず、自分達で資金を集めて10年がかりで完成させたという情熱の作品だ。
「マイルスの功績をすべて描くのではなくて、マイルスが、自分自身が主人公の映画に主演しているような感じで映画を作ろうと思った」とのこと。作品は、彼が傑作を生み出した後スランプに陥り、公から姿を消していた70年代後半に焦点が当てられている。
物語は、ローリング・ストーン誌の記者を演じるユアン・マクレガーが、”マイルス・デイビス復活”という記事を書きたいがために、彼の家を訪れるところから始まる。まず、ユアンがチャーミングな役どころで、ドン・チードルとの相性がばっちり。
今作は、マイルスの才能や、"Someday My Prince Will Come”のジャケットにもなった妻との出会い、別れなどを描きながら、記者と一緒にドラッグを手に入れるためにコロンビア大学の学生寮に行ったり、スランプ中に作ったテープを盗まれ、それを記者と取り戻すためにカーチェイスシーンがあったりする。銃撃シーンすらあったり、刑事物映画のようになる場面もある。そういうエンターテインメントな作風の中で、彼の際立った才能とキャラを見せるものになっているので、笑えるシーンもたくさんある。そのため、少し脚色し過ぎでは?という声も上がっていたりする。
映画は、家族の全面的協力を得て作られたため、彼の音楽は存分に使われている。観終わった後に、マイルス・デイビスの作品を片っ端から聴きたくなる映画なので、それだけでも個人的には大成功なのではと思う。
もう1本、トロント映画祭で、ハンク・ウィリアムスを主人公にした伝記映画”I Saw the Light”も観た。
トム・ヒドルストンが主演だったため、期待していたのだが……。これは、伝記映画がもっとも陥りやすい罠にはまった作品に思えた。つまり、彼らの功績をできるだけたくさん描こうとして、映画の中に物語として収まりきれていないのだ。トム・ヒドルストンの演じるハンク・ウィリアムスは文句なしなので、そのためだけに映画を観る価値はありとも言えるのだが……。
予告編はこちら。
音楽ものに限らず、伝記映画の流行は続いているが、スティーブ・ジョブズの伝記映画しかり、最初から素材に豊かな物語性があるし、観客がその人物に対してそれぞれ強い思いを持っているケースが多いだけに、作り手側がその人物の何をどう描きたいのかという視点と斬り込み方のセンスが最も問われることになるような気がする。