マルコム・マクラレンと”アルバトロス”

マルコム・マクラレンと”アルバトロス”

皆さんもご存知のように、先日あの元セックス・ピストルズのマネージャー&「世紀の仕掛け人」=マルコム・マクラレン氏が亡くなった。

★この訃報を知った時ふと思い出したのが、
Public Image Limitedの79年の曲”Albatross”の歌詞。

Slow motion
Slow motion

Getting rid of the albatross
Sowing seeds of discontent
I know you very well
You are unbearable
I've seen you up far too close

Frying rear blinds
If I wanted
Should I really
If I run away
Run away

この歌詞の中で、特に3行目~7行目にご注目。

「他人に不満の種子を植え付けて引き裂こうとする、
”unbearable(耐えられないほどイヤな奴)”」が描かれているわけだが、

個人的には、
この歌詞の”アルバトロス”=「マルコム・マクラレンの暗喩」なのではないか?
と長年思い続けてきた。

(1)特に78年頃/ピストルズ後期&ラスト・ツアー(in US)頃の、
「バンド内の分裂(当時ジョニー・ロットンとマクラレンがバンド運営の面で対立していたのは有名な事実。
そんなロットンをバンドから追い出すために、マクラレンが他のメンバー3人(ロットンの親友シドにまで)あることないことを吹き込んで、ロットンを孤立させ→ロットン脱退)」に至ったエピソードも、

ピストルズの歴史を少しでも齧った人なら知っているだろう。


(2)更には、この直後ピストルズが解散→PILを結成した直後(79年)において、
ライドン先生が「ピストルズ活動中のギャラ+印税etcの未払い」で元マネージャーのマクラレン氏を訴え、
長い法廷争いの後に勝訴!したエピソードも、聞いた事があると思う。

で、この”アルバトロス”はちょうどその頃書かれた曲だった(PILの『メタル・ボックス』に収録)。

という諸要素+ピストルズ末期の状況を考え合わせるに、
ますます「”アルバトロス”=マルコム・マクラレン」説には確信に近いものを感じ初めていたわけですが。


★去年年末にUKで行われた、あの一連の「PIL再結成ライヴ」において、
図らずもライドン先生自らその「答え」を出してくれた。

あの夜PILがこの曲を演奏した際、歌詞中部の、
Should I really
If I run away
Run away

の後に、なんとライドン先生は、
「No I never run away! Malcolm, you run away~」のアドリブを
ご丁寧にも付け加えて歌った。
(あのツアーを収録したライヴ盤『A-Life』の@Brixton Academy版にもその部分が録音されている)。

、、、やっぱり”アルバトロス”はマルコム・マクラレンのことだったんだ!

やっと長年の疑問が解けたわけですが。

あれ以後もライドン先生は長い間(ほんのつい最近まで)、
マクラレン氏に対し、決して「友好的とは呼べない」コメントをメディアに出るたびにぶちまけ続けてきた。
「俺も未だにマルコムを憎悪しているし、マルコムも俺を未だに憎悪している。
マルコムと俺は永遠の宿敵同士であり続けるだろう」とまで言及していた。

先生としては、今も「あの時、自分の親友&味方だった筈のシドにまで悪口を吹き込み、自分に背かせたマルコム」への許しがたい”怒り”はまだ続いていたんだな、、、と悲痛な思いもあっただけに、

今回マクラレン氏が亡くなったと聞いた時、
ライドン先生は一体どういう追悼の言葉を贈るんだろう?
というのも非常に気になっていた。

先生は昔から、人が死んだからって、決してその人の生前の良くない面まで美化して、
「聖人君子」であったかのように言い繕う(世間はこういう人がほとんどですが)ような偽善者じゃないからだ。

今回の追悼コメントで、
先生がマクラレン氏を「Entertainer」と称しているのを見て、
やっぱりこの人は変わっていないな、、、とやや安堵の思いも感じた。

「Entertainer」=死者へのリスペクトは重々払いつつも、
決して「偽りの愛や好意」を飾り付けた、わざとらしい美辞麗句・呼び名ではない。
人格的な欠陥は普通人以上にあった人だけど、
同時に「”パンク”をロック史上に今も刻印する究極の仕掛け人」でもあったマクラレン氏を表現するのに、
むしろこれ以上ふさわしい言葉が他にあるだろうか?


R. I.P. マルコム・マクラレン。
筆者はあなたに対し「私怨」は全くないので、心からご冥福をお祈りします、、、。
児島由紀子の「ロンドン通信」の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする