R&Bシンガーにとって日本語を歌にどう乗せるかは永遠の課題だと思うが、Archeのそれはこれまでに聴いたどれとも違っていて、子音を立たせてグルーヴを生みながらも、同時に日本語にある湿り気や重みも内包したオリジナルなもの。その生歌がドラムとDJが作るビートに乗ったときのパワーが凄まじかった。ライブはMCもなく楽曲だけで見せるストロングスタイルだったが、愛を歌うArcheの詞世界とウェットで濃密な歌がマッチしていて、どんな言葉よりも雄弁に曲の情景を語っていた。
本編最後の“you are”の前にあった唯一のMCで届けられたのは、ついにたどり着いた音楽という居場所でたくさんの人と出会えたことへの感謝と、Archeが歌う愛は「自分を愛すること」であるという表現者としてのアティチュードの提示。パワフルな歌とは裏腹にウィスパーでシャイな語り口からも、来場者一人ひとりに配られた手書きのメッセージカードからも、Archeの「人生=音楽」の佇まいの魅力を感じる感動的なライブだった。(畑雄介)