ザ・スマッシング・パンプキンズ――1990年代のオルタナティブシーンに彗星のごとく現れ、その叙情体なリリックとハードなサウンドで世界中の音楽ファンを魅了した彼らが、ついに約12年ぶりに来日を果たす。公演まで残すところ約2ヶ月。既にカウントダウンは始まっており、この瞬間を待ちわびる高揚感が日に日に高まっていることだろう。
しかし、今回の公演は単なる“12年ぶりの来日”という言葉だけでは語り尽くせない、非常に特別な意味を持つツアーとなる。なぜなら、長きにわたり確執が取り沙汰されてきたオリジナルメンバー、ジェームス・イハ(G)、ジミー・チェンバレン(Dr)が再びバンドに復帰し、黄金時代のメンバーが日本の地に再集結するのだ。この編成での来日は実に25年ぶりで、まさに奇跡的な光景が目の前に広がるのだ。
しかし、それだけではない。1995年にリリースされ、彼らのキャリアの頂点を象徴する2枚組アルバム『メロンコリーそして終りのない悲しみ』が、今年で30周年を迎えるという大きな節目の年でもある。ライブの枠を超えて、彼らの音楽的功績を真に祝福する“歴史的なツアー”となることは間違いない。
そんな記念すべき来日公演に先駆けて、次号のロッキング・オンでは、2022年に行われたビリー・コーガン(Vo/G)のインタビューを掲載。90年代以降、音楽業界の流行やムーブメントに迎合することなく、自らの信念と美学を貫き通してきた彼は、“オルタナティブのダークヒーロー”と呼ばれ、アウトサイダー的な存在として語られてきた。しかし、このインタビューでは、そうしたイメージの裏にある、彼のアーティストとしての真摯な姿勢、そして歳月を経て徐々に変化していった心境が率直に語られている。
彼の言葉には、今なお失われることのない音楽への情熱が脈打っており、かつて“ロックの悪役”と呼ばれたその姿とは異なる、ひとりの音楽家としての誠実さと覚悟が宿っている。彼を突き動かしてきた衝動、その原点にある想いがインタビューの中に明確に刻まれている。
この夏、会場でザ・スマッシング・パンプキンズの歴史的な瞬間を目撃する人も、そうでない人も――ぜひこのインタビューを通じて、ビリー・コーガンという稀代のアーティストの“今”に触れてほしい。そこには、時代を超えて響くロックの真価と、彼の揺るぎない表現者としての魂がある。(北川裕也)
ザ・スマッシング・パンプキンズの記事が掲載されるロッキング・オン8月号