2022年1月に大阪で結成された男女混合ピアノロックバンド、606号室。
ピアノを中心に据えたダイナミックで唯一無二のバンドサウンドと、昇栄(Vo・G)が紡ぐ優しさに溢れた歌詞が彼らの魅力だ。
代表曲“未恋”では、終わってしまった恋のことを思い浮かべながら《私と君の物語はもう終わったんでしょ/先のページは作れやしないと/私は栞を挟んでるままだ》と割り切れない想いを歌っていて、そこから浮かび上がってくるのは、いつも恋愛において自分が下手に回ってしまう自信のない主人公の姿だ。しかし、終わってしまった恋すらも完全に切り捨てることはできず、心の中に大切に持ち続けてしまうのは、自分が関わるすべての人や時間に「愛」を持ち、与え続けたいという実直な祈りを持っているからなのだと思う。
ピアノ、ギター、ベース、ドラムで構成される躍動的なバンドサウンドは、楽曲ごとにはもちろん、1曲の中でも彩り豊かな表情を見せるから、その世界観にぐっと引き込まれてしまう。バンドとしてまだまだいろいろな引き出しを持っていそうで、ポップ方面の楽曲もスケール感の大きい楽曲も、彼らがこれからどんなアプローチを見せてくれるのか、楽しみだ。(竹内ほのか)
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ピアノロックの新星、606号室。煌めくバンドサウンドがあなたの苦しみをそっと抱きしめる
2024.03.19 18:00