とんでもないライブを観てしまった。
客演だけでも目眩がするほど豪華なのに、映像・演出もタイトに作り込まれていて、あっという間の3時間。まるですべてがクライマックスのようで、興奮と快楽が途切れることのない至福のエンターテインメントショーだった。
Awichは、その音楽で全てを語る。希望も葛藤も、明るい光も深い闇も、すべてを包み込むように表現する。エンタメに担わされた役割というものが、辛い現実や退屈な日常を救うものである以上、現実を逃避する物語の方が受け入れられやすいのは確かだ。それでもAwichは見たくない惨めな自分とも向き合い、過去を美化せずにありのままを歌う。だからこそ、彼女の言葉には説得力があるし、温もりがある。
そして来年からは本格的に海外での活動を開始することが発表された。
ここから先、Awichの前には舗装された道はないかもしれないが、彼女の心には、進むべき方向が確かに描かれていた。
不屈の女王がこれまで築いてきたもの――音楽、コミュニティ、そして自身の経験――は、まだ誰も踏み入れていない領域で新たな道を切り開く手がかりとなるだろう。その証とも言えるライブパフォーマンスは、彼女がこれから未知のステージへ踏み出す準備ができていることを物語っていた。(古閑英揮)
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AwichのKアリーナ公演は新作『THE UNION』を体現した至福のエンターテインメントショーだった
2023.11.06 07:43