からあげ弁当て。今やおかしなバンド名が珍しくない世の中ではあるが、にしても、いくらなんでも。マカロニえんぴつというバンド名にしたことを後悔している、と、はっとり(Vo・G)は公言しているが、それをはるかに上回るレベルじゃないか。検索された時のこととか考えなさいよ。と、まず呆れていたら、新宿LOFTでのイベントのサブステージに出るというので観に行ったのだが(7月4日)、その直後にボーカル&ギターの男が自身の名前を改名した。「焼きそば」に。もはや何か言う気も失せるが、そしてそのLOFTでのステージは素人全開で、これも「いくらなんでも……」な仕上がりだったのだが、ただし。その楽曲がどれも、ハッとするほどの輝きに満ちていることは、どうやったって否定しがたいのだった。
ジャンル的には、30年前なら「ビートパンク」、20年前なら「青春パンク」と呼ばれ、今は「ブームじゃなくていつもあるのがあたりまえになった」音楽の範疇。つまり、もっともシンプルで、もっとも誰にでもできそうであるだけに、逆にソングライター/パフォーマーとしての能力が丸裸で問われることになるスタイルだが、その「誰にでもできそうだけど他の誰にもできない」破壊力及び突き抜け力が、すさまじいのだ。特にバラード系の曲の、メロディにも歌詞にも溢れる叙情や哀愁や無常観。聴いていると己の姿勢を正したくなる、身体も心も。
焼きそば、ベースの春貴、ドラムのこーたろーの3人で、2021年12月に関西で活動開始。今年12月6日に初のフルアルバム『I am hungry』をリリースし、初のツアーで東名阪を回る。なお、11月16日に新代田FEVERでのステージを観たら、別のバンドかと思うほどよくなっていた。焼きそば、途中で「青春を取り戻します!」と叫び、上半身裸になる。胸から腹にかけて「魂」と殴り書かれていた。ライブだけでなく、ラジオに出たりする時も、書いてから行くそうだ。いろいろ破天荒で「養殖」感ゼロの、嬉しくなるバンドの登場だと思う。要注目。
文=兵庫慎司
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年1月号より抜粋)
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2023.12.06 12:00