「世界のリーダーたちからしたら、悪い出来事はむしろ望むところだったりするわけ。全てを牛耳ってるような連中にとっては好都合なんだ。だから『ファック・ユー、いいよ。それならこっちは対抗して踊ってやる』っていうさ」
2019年1月の来日公演も素晴らしかったカリフォルニア・パンクの王者、オフスプリング。彼らがなんと9年ぶりになる10thアルバム『LetThe Bad Times Roll』を遂に完成させた。記念すべき10枚目にあたるスタジオ作はアメリカが抱える政治問題や薬物依存、男女間の日常を切り取ったものまで豊富だが、一貫しているのは混迷する社会に対し、現状を追認しない断固たるスタンスだ。
「本当にそれでいいのか?」とリスナーを一瞬立ち止まらせ、未来を少しでも明るくするための、特効薬としてのパンク・サウンドをここに鳴らしている。本作はソリッドな表情の中にオフスプリングらしい光と影、明と暗、シリアスとユーモアをふんだんに盛り込んだタイトな1枚に仕上がった。
どこから聴いても従来のバンド像を裏切らない鉄壁のサウンドである。加えて、生来のパンク・スピリットが息づいた鋭いメッセージ性を帯びた作風に、体の芯から湧くような熱を感じ取ってもらえるに違いない。できればブックレット記載の歌詞と共に本作と向き合うことをお薦めしたい。今回、デクスターとヌードルズのふたりにじっくり話を聞いてきた。(荒金良介)
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