また『PUNK』を語る上で忘れてはならないポイントがある。CHAIが新たな価値観として掲げてきた「NEOかわいい」という言葉が、どの曲の歌詞にも見当たらないことだ。ルックスに関する表現自体も少ないように思われる。代わりに今作で据えられているのは、「自分の内面を変えて、もっと自由に生きやすくしよう」という歌だ。《落ちこんではCRY & CRYして/部屋のすみでROCK & ROLLなんて/このままではNOT OK!/さーて、抜けださなきゃ DON’T STAY》(“CHOOSE GO!”)と図星な表現を使いつつ現状打破を鼓舞するフレーズがあれば、《大人になるって/それが理由で/気をつかうばっかじゃ/そんなのつまらない/大人になるって/もっと自分とちがう人とふざけ合える/そう なればいいな》(“FAMILY MEMBER”)と大人の生きにくさを取り除こうとする一文もある。今作でもハッとするような新しい概念や価値観がいくつも提示されており、辛いのがデフォルトになっている生き方やステレオタイプの考え方から抜け出すためのヒントがたくさんばらまかれているのだ。CHAIの音楽を聴いていると、いかに自分が自ずと窮屈な生活を選択してしまっているかを思い知らされる。外見のコンプレックスと向き合うCHAIは博愛的だと思ったが、内面のコンプレックスと闘う最新のCHAIもまた、すべての聴き手の心に自由を与えようとする慈愛の深い人たちだと思う。そういう新たな一面が歌詞で開花したという点においても、『PUNK』は一つの高みに達した作品と言えるだろう。CHAIがインパクトの次に送り出した至福のサウンド、「NEOかわいい」の次に提示した生きやすさへのアプローチは、彼女たちが登場した時と同じように、きっと多くの人々の苦悩にはたらきかけていくに違いない。新アルバム『PUNK』には、現代を生きる人たちへ向けられたCHAIからのメッセージと愛情が、ぎゅっと詰まっている。(笠原瑛里)
CHAIは「NEOかわいい」の先へ行く。新アルバム『PUNK』で鳴り響く「生きやすさ」へのヒント
2019.02.18 13:15
また『PUNK』を語る上で忘れてはならないポイントがある。CHAIが新たな価値観として掲げてきた「NEOかわいい」という言葉が、どの曲の歌詞にも見当たらないことだ。ルックスに関する表現自体も少ないように思われる。代わりに今作で据えられているのは、「自分の内面を変えて、もっと自由に生きやすくしよう」という歌だ。《落ちこんではCRY & CRYして/部屋のすみでROCK & ROLLなんて/このままではNOT OK!/さーて、抜けださなきゃ DON’T STAY》(“CHOOSE GO!”)と図星な表現を使いつつ現状打破を鼓舞するフレーズがあれば、《大人になるって/それが理由で/気をつかうばっかじゃ/そんなのつまらない/大人になるって/もっと自分とちがう人とふざけ合える/そう なればいいな》(“FAMILY MEMBER”)と大人の生きにくさを取り除こうとする一文もある。今作でもハッとするような新しい概念や価値観がいくつも提示されており、辛いのがデフォルトになっている生き方やステレオタイプの考え方から抜け出すためのヒントがたくさんばらまかれているのだ。CHAIの音楽を聴いていると、いかに自分が自ずと窮屈な生活を選択してしまっているかを思い知らされる。外見のコンプレックスと向き合うCHAIは博愛的だと思ったが、内面のコンプレックスと闘う最新のCHAIもまた、すべての聴き手の心に自由を与えようとする慈愛の深い人たちだと思う。そういう新たな一面が歌詞で開花したという点においても、『PUNK』は一つの高みに達した作品と言えるだろう。CHAIがインパクトの次に送り出した至福のサウンド、「NEOかわいい」の次に提示した生きやすさへのアプローチは、彼女たちが登場した時と同じように、きっと多くの人々の苦悩にはたらきかけていくに違いない。新アルバム『PUNK』には、現代を生きる人たちへ向けられたCHAIからのメッセージと愛情が、ぎゅっと詰まっている。(笠原瑛里)