年初、様々なメディアで「2018年にリリースが予定される注目アルバム」が話題に上る中、各リストに必ずエントリーしていたのが、ヴァンパイア・ウィークエンドの新作だ。昨年秋のインタビューでエズラ・クーニグが「新作は80%出来上がっている。残りの20%が大変なんだけど」と語ったこと、新作に『ミツビシ・マキアート』なる珍妙な仮題が付けられていることも既に報じられており、フジロックを含む各国フェスへの出演も決定していることからも、彼らの新作が今年リリースされることは確定とみていいだろう。そして5年ぶりの来日となるフジが、VWの新曲のプレイをいち早く目撃できる場となる可能性も、限りなく高い。
そう、『ミツビシ・マキアート(仮)』は前作『モダン・ヴァンパイアズ・オブ・ザ・シティ』から実に5年ぶりとなる4枚目だ。しかもその間にはロスタム・バトマングリの脱退(2016)という大きな転機もあった。彼は脱退後もソロ・アーティスト&プロデューサーとして精力的に活動しているが、VWの音楽性においてエズラと共にイニシアチブを取っていたロスタムの不在が、彼らの新作の方向性に与える影響はもちろん少なくないはずだ。その一方で、エズラもビヨンセとのコラボや映画『ピーターラビット』への曲提供など、いくつものビッグ・プロジェクトを手掛けてきた。つまり、VWの5年間の不在は非常に意義深いものであり、その意義は『ミツビシ・マキアート(仮)』に大きな変化と進化をもたらすことになるだろう。
今年は彼らにとってデビュー作『ヴァンパイア・ウィークエンド』の10周年でもある。アフロビートの肉体性とアート・ロックの知性を交配させることで、USインディの未来を指し示したNYの秀才集団、それがVWの出発点だった。彼らは『コントラ』でインディ・シーンのトップに立ち、そして『モダン・ヴァンパイアズ〜』に至り、彼らが目指した未来はインディ云々の領域ではなく、メジャー・スケールのポップの未来であったことを証明してみせた。VWは、USインディ勢のポップ化が急激に進んだ時代を体現したバンドだったのだ。しかし今、ポップの意味は5年前と大きく様変わりしている。彼らは新たな時代にコミットしていくのか、それとも別の道を切り拓くのか――すべては今夏、明らかにされるはずだ。 (粉川しの)
この3曲が聴きたい!
今回はやはりなんと言っても『ミツビシ・マキアート(仮)』からの新曲が最大の懸案事項。そして新作モードの彼らによってアルバム・デビューから10年の歩みが如何に再構築されるのかも注目だ。マストで演ってほしいのは『ヴァンパイア・ウィークエンド』時代の未成形の勢いを象徴する鉄板の“Aパンク”、『コントラ』からは迷うところだが、夏らしいフェス曲という意味では敢えてアンセムとしての押しの強さよりチルタイム仕様のヌケを優先で“ギヴィング・アップ・ザ・ガン”を。『モダン・ヴァンパイアズ~』曲もこれまた難題だが、1曲選ぶならエルヴィス・オマージュの楽しさの苗場での体感は必須ということで、“ダイアン・ヤング”!
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