セカオワ、突如現れた奇跡の街「Twilight City」とは何だったのか。日スタ初日レポ!
2015.07.21 09:02
2015年7月18日、19日の2日間、SEKAI NO OWARIの日産スタジアム公演「Twilight City」が開催された。RO69では、この初日となった2015年7月18日の公演の模様をライヴ写真とレポートでお届けする。
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「今回は『Twilight City』ということで、このセットはひとつの街になってます!」と語るNakajinの言葉の通り、目の前には舞台装飾という概念を遥かに越えた「街」の風景が広がっている――「炎と森のカーニバル」(2013年)、「TOKYO FANTASY」(2014年)と富士急ハイランド・コニファーフォレストに一大ワンダーランドを繰り広げてきたSEKAI NO OWARIが、日産スタジアムを舞台として7月18日・19日の2日間、実に1日7万人を動員した「Twilight City」。SEKAI NO OWARIの音楽世界の訴求力と、圧巻の舞台装置や演出と有機的にリンクし合う、唯一無二のマジックがそこには確かにあった。
「Twilight City」1日目、7月18日。会場に入ってまず目を奪われるのは、高さ40mに及ぶというステージセット。「炎と森のカーニバル」「TOKYO FANTASY」でもお馴染みの巨大樹のモチーフと、台湾や香港に通じる雰囲気の「店」が何層にも構築された街並が渾然一体となったメインステージ。その両脇に数々のヴィジョンと、長い通路を挟んで両袖には謎の「駅」が設置されている。「天空橋」「月光駅前」「鬼屋敷三番街」「銀河街」といった座席エリアのネーミング、キツネ面をつけたスタッフの佇まいと相俟って、ここがポップの異世界であるという感覚が刻一刻と強まってくる。午前中から続く雨が降ったり止んだりというコンディションも何のその、観客の表情ははちきれんばかりの期待感に満ちている。
2日間のゲストアクトとして「Twilight City」に招かれたのは、YouTubeからスターダムへと駆け上がったアメリカの若き精鋭=オースティン・マホーン。開幕早々から“Banga! Banga!”などキラーナンバーをキレキレのダンスとともに熱唱、満場のハンドウェーブを巻き起こしていく。アコギ弾き語り+ピアノ編成で“Shadow”、ピアノをバックにエド・シーラン“Thinking Out Loud”のカバーを歌い上げた後は一転、7月1日にリリースされた配信シングル曲“Dirty Work”で一気にクラップを嵐を呼び起こす。ピットブルとのコラボ曲“Mmm Yeah”まで30分ほどのアクトに、その才気と躍動感を凝縮してみせたオースティン。「ありがとう! 愛してます!」と日本語で叫ぶ彼に、惜しみない喝采が降り注いだ。
そして18:33、アルバム『Tree』の幕開けを告げる鐘の音が響き、ヴィジョンには銀河鉄道が「Twilight City」に向けて疾駆してくるアニメ映像が映し出され――ステージにFukase、Nakajin、Saori、DJ LOVEが登場、炎ゆらめくステージに鳴り響く“炎と森のカーニバル”に、スタジアムが大歓声に包まれていく。“Love the warz”では曲に合わせて火の玉が噴き上がり、“虹色の戦争”では一面のジャンプとクラップで会場が大きく揺れる。曲後半、サビで歌メロを委ねるFukaseに応えて、7万人から高らかなシンガロングが湧き起こる。「いいね!」と呼びかけるFukaseにさらに歓喜の声が響く。
“青い太陽”、さらにライヴ初披露となる“PLAY”を演奏したところで、「Twilightは『たそがれ』の意味で……」と解説するFukaseとNakajinがステージ上手袖へ移動。「ここにはね、駅があるんですよ」というNakajinがの言葉とともに、ふたりは列車型のステージカーに「乗車」、広大なスタジアムをぐるり一周しながら、舞台上のSaori&DJ LOVEと連携して“ファンタジー”を熱演、7万人が驚きと感激に包まれていく。「この4人にしかできないこと」と「この4人だからできること」をひとつひとつ丹念に積み上げた結果、バンドというカテゴリーを遥かに飛び越えるに至った、自由で冒険的な音楽世界。そのクリエイティヴィティを惜しみなくエンタテインメントに注ぎながら、音楽では完結しないポップワールドを築き上げてきた極彩色の闘争心……まさにSEKAI NO OWARIの真髄そのものの、珠玉の時間と空間。会場の祝祭感と一体感が、1曲また1曲と強さを増していくのがわかる。
ライヴ中盤には、『進撃の巨人』主題歌の英語詞2曲“ANTI-HERO”“SOS”を立て続けに演奏。ダン・ジ・オートメイターとともに作り上げたクール&ダークなサウンドとSaoriの鮮烈なピアノプレイが織り成す、“ANTI-HERO”のミステリアスな空気感。美しいメロディを歌い上げるFukaseのファルセット、Nakajinの緻密なアコギのフレーズが、流麗なアレンジとともにシンフォニックな豊潤さをたたえて鳴り渡った“SOS”。いずれもSEKAI NO OWARIの音楽的深化を如実に物語るものだった。そして、中盤の見せ場と言えばDJ LOVE。Fukase/Nakajin/Saoriが「LOVEは次何したら面白い?」と無茶振り案を考えるパペットアニメ風の映像に続けて、メタルスタイルのDJ LOVEがフライングVのギターを構えて登場。「オレは頼まれてこのバンドに入ったんだ」「だけど頼まれるのは『空を歩け!』『ダンスをしろ!』」「俺はピエロだ!」とメタルの爆音に乗せて絶唱、フライングVから火花を散らし、7万人を爆笑と歓声で包んでいく。
Fukase&Saoriでピアノアレンジの“ピエロ”、Fukase&Nakajinでアコギスタイルの“スノーマジックファンタジー”を、舞台上層部分の「店」を次々に移動しながら披露。ようやく雨も止み、再びメインの舞台に戻った4人は“broken bone”、「?」の文字がウォータースクリーンに踊った“Death Disco”を連射。そして、「NHK全国学校音楽コンクール2015」中学生の部の課題曲として提供した“プレゼント”へ。「私も子供の頃、ひとりぼっちの時間がすごく長くて。でも、今28歳になって思うのは、あの時間がすごく大切だったんだなって。『なんで自分は友達ができないんだろう?』ってひとりぼっちで考えてた時間が、私にたくさんの答えをくれたなって思ったんです」と歌詞にこめた想いを語るSaoriの言葉と、《ひとりぼっちにさせないから/大丈夫だよ/その言葉返せるように/強くなりたい》というフレーズが、ひときわ熱く深く胸に染みた。
“マーメイドラプソディー”ではウォータースクリーンにマーメイドが踊り、7万人の腕に輝く時計型のリング「スターライトリング」が“スターライトパレード”をさらに眩しく彩っていく。初期の名曲“幻の命”、Nakajinの三味線&Saoriの大正琴が夜空に響いた“ムーンライトステーション”に続けて、本編最後の“Dragon Night”では、「歌える?」というFukaseのコールに導かれて7万人の歌声がスタジアムを震わせていった。アンコールの“RPG”で再び一面のシンガロングを巻き起こしたところで、「このステージをみなさんに見せるために、力を尽くしてくれたスタッフに――力を尽くしてきた同志に、この1曲を贈りたいと思います!」(Saori)と“Fight Music”へ流れ込み、会場をタオルの渦で塗り替えていく。この日のラストは“インスタントラジオ”。銀テープが舞い、Nakajinのギターソロが華麗に鳴り渡る中、花火が舞台を眩しく染め上げて……終了。これだけ壮大なステージを観た後でも、「SEKAI NO OWARIの表現のスケールはもっと大きくなる」と確信せずにいられない、至上の一夜だった。(高橋智樹)
●セットリスト
01.炎と森のカーニバル
02.Love the warz -rearranged-
03.虹色の戦争
04.青い太陽
05.PLAY
06.ファンタジー
07.ANTI-HERO
08.SOS
《DJ LOVEコーナー》
09.ピエロ -Twilight City arranged-
10.スノーマジックファンタジー -Twilight City arranged-
11.broken bone
12.Death Disco
13.プレゼント
14.マーメイドラプソディー
15.スターライトパレード
16.幻の命
17.ムーンライトステーション
18.Dragon Night
(encore)
19.RPG
20.Fight Music
21.インスタントラジオ
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