●何よりも初のソロアルバム完成、おめでとうございます。まずは今の心境を聞かせてください。「とにかく超嬉しい。実はついさっきLAに到着したばかりなんだけど、今はウィスキーで演奏するのが待ちきれない気分だね。トム・モレロをはじめ、参加してくれたゲストたちとやってきたことの成果をやっと披露できる幸せを噛み締めているよ」●アルバムは『マスカレード』と銘打たれています。なかなかミステリアスなタイトルですよね。「確かに謎めいたタイトルだよね。このタイトルの背後にあるものを理解するには、曲に深く入り込んでもらうしかないかな。そうすれば本当の僕を理解してもらえると思う。ミステリアスな雰囲気を出したかったというか、ここに収められた音楽のおかげで、これまでとは違う自分自身のリアルな一面を見せられたように思う。そういう意味でつけたんだ」●今作を制作するにあたり、いくつか方向性の選択肢があったはずだと思います。たとえばインストゥルメンタルに重きを置くとか、歌手デビュー的な作風とか。あなた自身、どのような作品像を求めたいと考えていたんでしょうか?「僕はギタリストだから、確かに選択肢という意味ではそういうことになりがちだよね。でも実際、このアルバムはごく自然にこうなったとしか言いようがないんだ。まず僕にはギターがあるから、そこからのアプローチがある。それにバンドのメンバーでもあるから、今回も素晴らしいアーティストたちに集まってもらって、まるで最高のバンドを組むような感じにしようと考えた。でも同時に自分の声も探ってみた。初めて歌詞も書いて、自分で歌ってみたり。アイデアとしては、そういったものを全部このアルバムに詰め込んでしまおうっていうことだったんだ。そうやっていろんな面を出して作っていくのがすごく面白かったし、そこをわかってもらえたら嬉しいな。ボーカルについても結構自然に取り組めたかなと思う。ドラムは自分では演奏できないけど、どういう感じにしたいかはわかっているし、ベースは弾けるから大丈夫。そうなってくると、次のステップとしては『自分で歌ってみようかな』ということになってくるよね。それが最後の1ピースというか、曲を作るための重要な部分になってくる。つまり歌うことが曲を全体的にコントロールするために必要だったんだ」●なるほど。トム・モレロをプロデューサーに起用した理由は? 「まず彼が僕の親しい友人であり、本当にいい関係を築けているというのが第一の理由だね。出会ったのは2年前。LAでマネスキンが“ゴシップ”で彼と共演した時のこと。それ以降ちょくちょく彼が呼んでくれて、ギグに参加してきたんだ。とても気が合うんだよね。今回のプロジェクトで、誰かプロダクション全体を仕切ってくれる人材が必要だってことになった時、彼なら完璧だと思った。実際、スタジオで一緒にすごくいい時間を過ごせたし、丸一日かけて1曲に取り組んだり、アレンジをやったり。彼は集中力がすごくて、本当に多くのことを彼から学ばせてもらった。ギタリストとしてももちろん、ビジョンを持つということについてもね。彼の印象は初めて会った時から変わってない。最初の出会いが音楽的な環境、つまりスタジオでのことだったから、人としての彼もギタリストとしての彼もいっぺんに知ったという感じだった。それ以降も、何度も素晴らしい時間を一緒に過ごしてきたよ」●そのトムは演奏面でもアルバムに参加していますが。とにかくゲストの顔ぶれが豪華かつ意外で驚かされます。あなたが「この人にだけはどうしても参加して欲しい」と考えていたのは誰でしたか?「チャド・スミスには是非とも参加して欲しかった。でももちろん全員重要だったよ。今回参加してくれたゲストの多くは親しい友人で、たとえばザ・ストラッツのルーク・スピラーともよく会っているしね。でも本当にチャドと一緒にやれて最高だった。トムとスタジオにいた時に、たまたまチャドが隣で別のレコーディングをやっていたんだ。それで『飛び入りで参加しない?』と誘ってみたら『面白いね』という感じでノってきてくれてさ。最高でしょ? すごく自然な流れだったんだ。『試しにやってみようか』という感じで1曲やってもらったら彼は完璧にそれを仕留めてくれて、『他の曲もお願いできる?』と頼んだら、『もちろんいいよ』と快く引き受けてくれたんだ」●アレックス・カプラノスが参加している“ユー・スピン・ミー・ラウンド(ライク・ア・レコード)”は驚きでした。デッド・オア・アライヴのヒット曲の懐かしいカバーですが、この選曲理由は?「まずアレックス、というかフランツ・フェルディナンドは、僕らマネスキンが大きな影響を受けたバンドのひとつで、本当に最高のバンドだし、彼らの“テイク・ミー・アウト”のカバーもしてきた。今回あの曲をやったのは、ある時『アルバムにカバー曲があったらいいよね』って話になったことが発端だった。ロックの歴史を遡ってみても、たとえばガンズ・アンド・ローゼズが“天国の扉”をカバーしていたり、そうやって繰り返されてきたわけだよね。まずそういう意図があってカバーをやることを決め、その後ですぐにアレックスのことが頭に浮かんできたんだ。彼はあの曲をやることに俄然乗り気でね。『子供の頃に本当に何度も何度も聴いた曲だからカバーできてすごく嬉しい』って言ってくれてたよ。あれは彼にとっても僕にとってもスペシャルな曲なんだ」●セルジオ・ピッツォーノ、マキシムの参加も目を引きます。「正直に言うとセルジオとは今回初めて会ったんだけど、まず僕としてはアルバムにゴリゴリのアグレッシブな曲を入れたいと考えていて、そこで彼のことが頭に浮かんだんだ。そして一緒にロンドンで最高のセッションをした。何が素晴らしかったかって、初遭遇だったのに一緒にゼロから曲を作れたこと! 僕がメインのリフを思いついた瞬間から、その場でパフォーマンスするさまがもう圧巻だった。リフを演奏したら完全に即興で歌詞とメロディを書いちゃったんだよ。クレイジーで最高だったし、音楽の一番いいところって、そこだと思う。誰かと意気投合すると素晴らしい交流が生まれるっていうところだよ。あとマキシムも最高! さっきから『最高!』ばかり言ってるけど(笑)、このプロジェクトに参加してくれた人はみんな最高なんだ。本当に楽しかった。彼と一緒に書いた“フォーラウェイ”は興味深い曲で、僕はずっとアルバムを作るならエレクトロニックとロックを混ぜたいと考えたんだ。クラブにも合うような踊れる感じでありつつ、ロックのアティテュードもあるっていう曲がやりたくて、それなら彼がぴったりだと思ったんだ。めちゃくちゃ最高な仕上がりになったし、かなり特徴的な曲になったと思う。彼がエレクトロニックな要素を注入してくれたけど、なおかつ同時にロックでもある。完璧なバランスで融合しているエレクトロニックロックディスコソングになったと思うよ」●アップサール、ジェットのニック・セスターについてはどうですか?「アップサールも最高。LAで出会ったんだけど、最初に彼女の声を聴いた時にすごく感動してね。このアルバムには女性の声が欲しいと思ったんだけど、そこでまず浮かんだのが彼女だったんだ。一緒に作った“ルーシー”も素晴らしいものになったと思う。メロディとか雰囲気がすごくメランコリックで、そこに超ヘヴィーなギターリフが絡む。その組み合わせが超カッコいいと思う。ニックと初めて会ったのは彼の地元のオーストラリアに行った時、ブリスベン公演の際のことだった。僕らはそこでジェットの“アー・ユー・ゴナ・ビー・マイ・ガール”をカバーしたんだ。その時に彼が観に来てくれて、それ以来すごくいい関係が続いていて。今回のプロジェクトでも真っ先に頭に浮かんだし、彼はいつもながらの最高の仕事をしてくれた。彼の参加してくれた”ゲッチャ!“にはカッコいい要素が詰まっていて、すごく自分らしいヘヴィーなリフとヒップホップ感が同居しているうえに、すごくロックしていてキャッチーさもある。その全要素の組み合わせがアルバムの幕開けの曲として完璧にマッチしていたと思う」●我々としては、ハマ・オカモトの参加も見逃すわけにいきません。「彼はめちゃくちゃいい人だよね。今回は日本のミュージシャンにも是非参加して欲しいなと思ってさ。マネスキンは日本とすごくいい関係にある。日本公演は毎回最高だし、ファンが最高にヤバい。最高な思い出が多々ある。そこで彼のことが浮かんだんだ。レーベルも同じだしね。彼なら“ルーシー”にぴったりだと思ったし、案の定バッチリ決めてくれた。最高のベースラインだよね」●ええ。こうしてアルバムが世に出て、数日後にはライブも控えているわけですけど、当然ながらソロツアーを期待したくなるところです。「今回のウィスキーでのライブが一発目になるわけだけど、この先のことはまだ具体的には決まっていないし、まあこれからどうなるかってところだな。僕はライブで演奏するのが大好きだし、それが自分の柱のひとつだと思ってる。それにこのアルバムには雰囲気にもアティチュードにもすごくライブ感があると思っているから、当然ライブはやりたいと思っているよ。アルバムに参加してくれたみんなが毎回全員参加してくれたら最高だよね。それが本当に可能かどうかはともかく(笑)」●ある意味、マネスキンの成功があなたに今回のアルバム制作のチャンスをもたらしたといえるはずです。しかもそうした機会を新たな可能性の追求に繋げているのは、とても素敵なことだと思います。「もちろん自分でもそう思ってる。バンドで多くの経験をして、今回素晴らしい機会に恵まれて、自分の新たな面を探ることができた。バンドでツアーを回りながら多くの素晴らしい人たちと出会うことができた。そして今回、これまでとは違う自分の面を探ってみたら面白いんじゃないかと考えて、その最初の試みがこのアルバムになったわけだからね」●素晴らしいです。この次にやりたいことはもう見えてきましたか?「さすがにまだ考えてない(笑)。でもたくさんやりたいことはあるよ」●このアルバムを作ったことが、マネスキンの次作にも何らかの影響をもたらすことになると思いますか? 「100%影響すると思う。今回いちばん良かったのは、多くの素晴らしいアーティストと出会う機会があったことで、それは同時にある種の挑戦でもあった。初めて会った人に自分をどう理解してもらえるか、どうやってお互いの認識を擦り合わせるかという取り組みとしてもすごくいい経験になったし、間違いなく以前よりも多面的になれたというか、いろんなジャンルがわかるようになったと思う。さらに新たな可能性が開かれた気がしているし、それは間違いなくバンドにも作用すると思うよ。僕としては、このアルバムがリスナーにとってどんな形でもいいから刺激になること、何か素晴らしいことをするきっかけになることを願っている。誰にとっても何よりも大事なのは、自分の可能性を探ること、本当に好きなことをすることだと思う。僕自身も今回、自分が好きな音楽、リアルに感じられる音楽をやろうと思ったからね。みんなにも本当に好きなこと、人生において本当にやりたいことをやって欲しいんだ」
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