LOST IN TIME @ 新代田FEVER

LOST IN TIME TOUR 2013「いつも通りの、新たな、一歩」

LOST IN TIME @ 新代田FEVER
「いつも通りの、新たな、一歩」という、LOST IN TIMEらしい、しかし強い決意に満ちたタイトルが掲げられた、東名阪ワンマンツアーのファイナルとなった新代田FEVER。見事にソールドアウトとなり、フロアはギッシリと埋め尽くされていた。デビュー10周年となった昨年は『BEST きのう編』と『BEST あした編』という2枚のベストアルバムをリリース。一つの区切りを終えて、11年目の出発に注目が集まっている。

「あけましておめでとう」という海北大輔の挨拶からはじまった1曲目は、何と1stアルバム『冬空と君の手』に収録されている”手紙”! さらに“約束”、“通り雨”と、初期の名曲を畳み掛けていく。しょっぱなから不変的な魅力に圧倒されてしまったが、確実に大きな変化も感じた。一人一人の音が力強いのだ。特に、海北の歌。弾き語りもやっている影響だろうか、マイクを通さずとも響いてきそうなくらいクリアだ。会場の温度もあっという間に上がっていき、4曲目の“はじまり”の頃には、海北が頭を振るとブワサッ!と汗が飛び散るほど。今やサポート以上の存在感を見せる、ギタリストの三井律郎の陽のエネルギーも、大きく影響していると思う。

ソールドアウトの状況に「2013年、一発目から幸先がいいです」と笑顔を見せる海北。そして「僕らにとってありがとうは、誠心誠意歌うこと、楽器を鳴らすこと」と言い、すぐに次の“合い言葉”へ突入した。以前、海北はMCが長かったし、それはそれで味わい深かったけれど、どんどん歌うたいとしての自分に焦点を合わせてステージに立つようになってきたと思う。“一つだけ”、”教会通り“と続くうちに、どんどん涙腺が刺激されていく。彼らの楽曲は喜怒哀楽を表現しているのに、どうしてどんな楽曲も涙が出そうになるんだろう。

LOST IN TIME @ 新代田FEVER
「去年のライヴで言った通り、新曲をやります」と海北が言うと、大きな拍手が起こる。「年下が増えてきて、物凄く不安になった。気付いたら、あの頃と変わらない自分がいて」という、素直な33歳の男の本心を吐露し、新曲の“Over”に繋げていく。海北のパーソナルな思いが、多くの人の心の叫びになっていく予感がする楽曲だ。さらに、海北がピアノを弾きながら歌った“バードコール”は、ライヴハウスを飛び越えていきそうなスケール感を湛えていた。“声”を歌う前に「僕の声は何処まで届くんだろう」と、海北は呟いていたけれど、やはり彼らの音楽は、もっともっと広がっていくべきだ。11年目の今もなお、そう思わずにはいられない。

《頑張れよ 負けるなよ》というサビが、時代を経て熱量を増してきたように思える“旅立ち前夜”、金髪で気合いを入れた大岡源一郎のMCから、彼も歌う“鼓動”と、ますます会場の空気が心地よくなってくる。“希望”のイントロで「フゥー!」というオーディエンスの声が飛べば、次の曲は源ちゃんがつんのめるように「“ココロノウタ”!」と紹介。ライヴ感たっぷりの展開だ。

いよいよ本編も終わりに差し掛かり、海北が口を開いた。2013年のテーマが「仲間」だということ、年明けに聞いた仲間の大きな決断に、まだモヤモヤしていること……そんな、たっくさんの気持ちを込めた新曲“最後の頁”がラストナンバーとなった。最後、と名付けられているのに、まるではじまりのように力強い。「歌」が冴え渡る、彼らにしか生み出せない名曲だ。

LOST IN TIME @ 新代田FEVER
アンコールに迎えられて再び登場。「新しい曲を作っています。恐らく春頃には、新しい音源をリリースできると思う」と海北。続けて「盤もできていないのにツアーと、ツアーファイナルも決まりました。6月23日、恵比寿リキッドルームのワンマンです!」と告知すると、長い長い拍手が起きていた。そして“あしたのおと”、“線路の上”と演奏。彼らがステージを降りても、オーディエンスはアンコールを求め続ける。それに応えて現れた3人は、「外は今年一番の寒波が来ているから、風邪をひかないで帰ってね」という海北の言葉がぴったりな、ほっこりと温かい“呼吸”でライヴを締め括った。
例えば、彼らから暫くれていた人も、改めて聴いてみると、今の時代だからこそ、今の年齢だからこそ、ハッとする言葉や音があるんじゃないだろうか――ライヴ中、ふと、そんなことを思った。彼らはまだ、線路の上。続いていく旅路を、今年も追い続けたい。(高橋美穂)

セットリスト
1.手紙
2.約束
3.通り雨
4.はじまり
5.合い言葉
6.ひとつだけ
7.教会通り
8.Over(新曲)
9.青よりも蒼く
10.バードコール
11.声
12.旅立ち前夜
13.鼓動
14.希望
15.ココロノウタ
16.ひとりごと
17.最後の頁(新曲)

ENCORE1.あしたのおと
ENCORE2.線路の上

W・ENCORE.呼吸
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