m-flo@幕張メッセイベントホール
2012.05.27 09:50
単独のフルサイズ・ライヴとしては3年ぶり、ツアーとしては実に5年ぶりである。この間、それぞれのソロ・プロジェクトあるいはDJとしての活発な動きや、m-floとしてのべスト盤あるいはコラボ曲集等のリリースもあり、忙しそうにしている印象は変わらなかったのだが、ライヴについて言えば相当に久々。VERBALのMC第一声も「3年ぶりです!ただいま!」という素直なものだったが、だからというわけではなく、試合巧者な中にも新たな息吹を感じる初々しさがいいライヴだった。なにせ、3月にリリースされた5年ぶりのオリジナル・アルバム『SQUARE ONE』は、前作までの“LOVES”パターン~つまりパーマネントなヴォーカリストの不在を逆手にとって、曲毎に変幻自在なヴォーカリストを起用するという手法~を敢えて封印し、2人だけのDJ&ラップ編成ユニットとしての手腕に軸足を戻すという大胆な作風に驚かされたアルバム。もちろんこのライヴにおいてもそのストイックさは首尾一貫していただけでなく、クラブ~DJ文化を日本のシーンの中でメジャー化していった最初の世代である2人の強靭なメンタリティに感じ入るライヴとなった。もちろんVERBALのMCでもお馴染み、というか最早彼らのライヴのキャッチフレーズと化した“Party People”な盛り上がりも充分なライヴでもあったのだが。この日は5年ぶりとなるツアーのその初日であり、今後もツアーは続いていくのでセットリストの詳細な記述は差し控えるが、展開を簡単に言ってしまうと、メニューは最新アルバム『SQUARE ONE』のヘビーな質感を基本にしつつ、その中に往年の名曲をちりばめていくという構成。というと、流れに無理や不自然さが生じないのか?と思われるかもしれないが、そこを見事にクリアしているのが、ある意味、今回のツアーの肝だと思う。どういうことかというと、過去曲についていえばほとんどの曲がリミックスされ、2012型の新しいリズム、音色、グルーヴに衣替えされているのだ。つまり同じ曲でも時代背景やその場その場の空気感でどんどん音像を変えていく、つまりリミックスというDJ文化の面白さをここぞとばかりに発揮したメニューとなっていて、その大胆さに圧倒される2時間。それは同時に、これまでに築いたアリーナ・アーティストとしてのエンタテイメント性を維持しながら、新アルバムでのクラブ・ミュージックの再構築という新たなスタンスもきっちり示していく、半ば相反する2つの命題を時間をじっくり使って煮詰めていくことで両立させようとする、ふたりのパイオニアとしてのこだわりを今一度実感する作業でもある。
ライヴの進行に沿って話を進めると、開演時刻を15分ほど過ぎたところでようやく場内が暗転。すさまじい歓声の中、重低音が鳴り響き、ステージ背後いっぱいに広がった巨大スクリーンに幾何学模様のイルミネーションが映し出され激しく動き出す傍ら、ステージから客席に向かって放たれるレーザ―光線の数も量もおびただしく、一瞬にして現実から別世界へワープするド派手なオープニングで幕は切って落とされる。2人の姿を確認するべく、眩しいながらも目を凝らしてステージを観察すると、なんと☆Takuの居場所はステージの遥か上方のほとんど天井近い高み。目が慣れてきてようやく分かったのだが、なんとDJ台自身も巨大なスクリーンとして機能しており(つまりスクリーンの前後2枚重ね)、そのてっぺんに☆Takuがあたかも神のごとき佇まいで存在するという祝祭ムードを高める演出からライヴはスタート。そんな厳かな雰囲気の中、ステージ下手から駆け込んできたVERBALは早速「JUMP! JUMP!」と客席を煽り、場内は神聖さとクラブ感覚が同居する興奮状態で一気に過熱していく。最新アルバムは少しくシリアスな作風とはいえ、重低音とリズムが一層強調されたライヴ・サウンドでダンス・ミュージックとしての高性能ぶりを俄然発揮する一方、なにより久しぶり過ぎる邂逅の瞬間に演る側も見る側も素直な喜びを爆発させている様子が実に健全だ。場内はそのまま、数年前からあの“パーティー”な雰囲気が続いているかのようなほぼノンストップの、息をもつかせない展開に突入していく。そんな流れをきちんと維持~加速させていくのが、☆Takuのリミキサーといての手腕とプライドであり、それが今回のライヴの主役であることが分かってきたのが中盤にさしかかった辺りだった。m-floの新フェーズ開始に即して2人が標榜したのは本来のDJ文化の面白さを確認することであり、それはアルバム『SQUARE ONE』のPRについて、参加ヴォーカリストが誰それとか久々にツアーをやるとか派手なキャッチフレーズを一切使わず、あくまで音自身のラジカルさで勝負しようとしていたことからも明らかだったが、その手腕が一層発揮されたのが、過去の有名曲にどのようなリミックスを施し今現在の流れの中で披露するのか、という点だった。例えば彼等のブレイク期の代表曲「come again」も登場したのだが、LISAの声の元素材を尊重したトラックでまずはオーディエンスの期待にストレートに応える形で曲は始まる。しかし進んでいくにつれサウンド・パノラマに徐々に未体験の音が加わり始め、中盤以降はほとんど原曲をとどめないリズムパターンやサウンドカラ―に豹変していく。そして、そこから難なく最新アルバムの楽曲にクロスフェードさせていく手法などには☆TakuのDJとしての底意地を感じてしまったところで、本来ヴォーカル曲として作られたものをどのようにしてヴォーカリスト不在の状態で聴かせるのか、という無理難題に真正面から回答をたたき出す使命感が、蒼くも眩しい。そういう秘儀が随所で繰り出される度にこちらも何回でもうなずいてしまう、そんなミュージシャンシップの在り方にこそ感じ入ってしまうライヴ。これだけの大会場で、こういう手法を実践してしまえるアーティストもそう多くはないはず…と次々と続く貴重体験に、こちらもライヴだというのにいつの間にか全身耳にして聞き入る状態に。もっとも、そんなつもりで身構えてると、いくつかの曲では当時のLOVESヴォーカリストが当然のように現れ記憶通りの熱唱を聴かせてくれるところもあり、そういう方法で意表を突いてくるヒネクレ美学も発揮されてはいましたが。
そんな☆Takuのミュージシャンシップをエンターテイメントとして聞かせるVERBALの役者ぶりは、もはや言わずもがな。ステージを左右目一杯に使ってオーディエンスをコール&レスポンスで焚きつけていく様子といい、最新PV「She’s So (Outta Control)」でお馴染みのチアガール隊が登場した時の絡みといい(念のため言っておきますと、PVと違って完全には脱ぎませんでした)、“Party People”というフレーズを自らカラダ張ってメジャー化させてきた立ち振舞いは、今なお頼もしさ充分。実はこの日は、新しいリミックスを活かすべく曲を矢継ぎ早に繋げた展開が基本だったので、VERBALによるMC場面は少なめではあった。それでも終盤の挨拶時でひとしきり喋った後、曲に戻っていく際に人差し指を立てた腕を高く宙に掲げ、「DJ ☆Taku!」と呼びかけるあのポーズが久々に登場。例によってちょっともったいぶった後、「Drop it!」と言いその指をあたかもDJ台のスイッチを押すように下げて行くお馴染みのジェスチャーには、彼等がいよいよライヴの最前線に戻ってきたことを今一度実感した瞬間でもあり、ちょっとした事ながら意外に感極まってしまった。(小池清彦)