ロス・キャンペシーノス! @ 渋谷クラブクアトロ

つい1ヶ月前、サマーソニック08で来日したばかりで、千葉会場ではメインステージであるマリンスタジアムのトップバッターを堂々飾った男女混合7人組バンド、ロス・キャンペシーノス!が再び来日。待望の単独ツアーをここ東京からスタートさせた。

マリンスタジアムのどんだけ暴れても大丈夫な広いステージから、クアトロのステージ。正直この7人には狭すぎるんじゃないかと思ったけど、こじんまりとしていて、せせこましいこんなステージが一番このバンドには似合っているなと改めて思った。それはもちろん、バンドのスケールが大きいとか小さいの問題を言ってるのではなくて、彼らが奏でるドリーミーで、キラキラ輝いていて、極彩色に染めれたサウンドを全身で浴びるにはちょうど良い広さということ。

なんでサマソニ来日に合わせて単独公演を行わなかったんだろう、あえて1ヶ月後なのはなぜ?という疑問もあるのだが、彼らはなんと前作から約7ヶ月という短いインターバルで早くも新作アルバム『We’re Beautiful We’re Doomed』を10月22日にリリースするのだ。というわけで、この新作アルバムに収録される曲たちをいち早く聴くことができるという、最新のロス・キャンペシーノス!を体感できるライブでもあった。

セットリストのうち約半分はこのニュー・アルバムからの新曲で、いきなり、新作からのリード曲“Way To Make It Through The Wall”で幕を開けたのだが、フロアの熱気は半端なく、凄い盛り上がりだった。前へ前へと駆け抜けるような疾走感が堪らない! 彼らのサウンドには欠かせないバイオリンや可愛らしいグロッケン、シンセの音色は、思わずつんのめりそうになるほどの威勢の良さを穏やかにするどころか、むしろそれを助長していて、おもちゃ箱をひっくり返したかのようなゴチャゴチャ感を引き出している。

それにしても、7人で精一杯、音を鳴らしているのに、この絶妙な音の隙間と思わずニヤけてしまいそうなほどのローファイなサウンドはなんだろう。逆にすごいと思う。3ピース・バンドのローファイさとは明らかに違う、余裕のポップネス。これぞロス・キャンペシーノス!の魅力だ。ライブ後半、1stからの楽曲“My Year In Lists”“Death To Los Campesinos!”の流れで、場内は一気に沸点を迎え、軽やかにリズムをとりながら踊る人が続出。もうこの魅惑のポップ・ワールドには誰も抗うことはできず、ただただ身を任せるだけだ。

ラストは、バイオリンのハリエット嬢以外は全員が各々スピーカーやモニターに上って高い所から観客を煽り、本当に楽しそうな笑顔とともにあっという間の1時間半を駆け抜けた。鳴り止まないアンコールを求める声に、最高にハッピーで、最高に振り切れたキラー・チューン“Broken Heartbeats Sound Like Breakbeats”をかまして、この曲の最後で奏でられる緩やかなギターの音色で締めくくられた。

来る10月に発売されるニュー・アルバムに収録されている10曲は、あらかじめあった未発表曲とかではなくて、全てまっさらの状態から作られたものだそう。創作意欲が湧きまくっているバンドの絶好調さが、ライブからも窺える観ていて楽しい一夜だった。(阿部英理子)
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