ART-SCHOOL × VOLA & THE ORIENTAL MACHINE @ 恵比寿リキッドルーム

ART-SCHOOL×VOLA & THE ORIENTAL MACHINEの2マン『ECSTASY IN THE MACHINE』、恵比寿LIQUIDROOM。オープニング・アクトのyour gold,my pinkが終了後、木下理樹のDJを経て、VOLAがまばゆい照明に包まれて登場する。

初っ端から“self-defence”などお馴染みのナンバーを連発。アヒトは、首から下げた極小シンセサイザーをカチャカチャいじり、ハンド・マイクで「フゥフゥ!」とか「アウアウ!」とか奇声を上げ、ステージの端から端へと踊りまくる。じっと同じ場所に留まっているのは、ギターを弾く時かカウベルを鳴らす時くらい。「説明よろしいでしょうか? 昨日50/50っていうスプリット・シングルが出ましてですね」とアヒト。VOLAと、イタリアのバンドHEY HEY RADIO!が、2曲ずつ収録されているシングルである。そのシングルに収録の、“WEEKEND LOVERS”と“SWEET MAN”をプレイ。これまでのVOLAにないほどメロディが切ないこの2曲で、リキッドはダンスフロアへと変貌する。

終盤は、ライブでは鉄板、“Mexico Pub”がフロアへ投下。高速パーカッション乱れ打ちとギャング・オブ・フォーを思わせる硬質カッティング・ギターが交互にオーディエンスを襲い、フロアの熱狂はピークに!そのまま、ラストの“ORIENTAL MACHINE”へ突入。アヒトが、おなじみのカウベル&シンバル&タムのパーカッションを叩きまくり、ステージは幕を閉じた。

VOLAは、とにかくオーディエンスとコミュニケーションをとることに長けているバンドだ。楽曲はもちろんだが、アヒトの妙なよそよそしさが逆に親近感を生むMCにしてもそうだ。コール&レスポンス、ハンドクラップ、「L.O.V.E」と手で文字を作らせ、MC中にフロアへ乱入。一つ一つのアクションに、不思議と「煽り」が感じられず、自身とオーディエンスが自発的に楽しむことが、彼らのダンスミュージックを形成する上で不可欠な1パーツのように思える。ダンスミュージックとは、そこにダンスする人々がいてはじめて、1つの共有空間がフロアに構築される音楽だ。そんなダンスミュージック元来の図式が浮かび上がってくると同時に、それを生み出すものがステージ上にあるというロックの要素もしっかり見せ付けられたライブだった。そういえば、ライブ中のMCでアヒトから「アルバム出ますから! 」の一言も。次の一手は、どんな形で僕たちを狂乱と快楽の海へ落としてくれるのか楽しみだ。

そして、もはやお馴染みのエイフェックス・ツイン“Girl/Boy Song”のSEに迎えられ、ART-SCHOOLの4人がステージへ。ドラム・櫻井雄一の脱退と鈴木浩之の加入からほぼ1ヶ月が経過し、まだ試運転の状態だとは思うが、気負いした様子もなく、いい意味で力の抜けた表情の4人。しかし、4人の表情とは対照的に、オープニング・ナンバー“Sheila”を演奏した途端、フロアにはグランジの嵐が吹き荒れる。まるで悲鳴がそのまま歌になったような、木下理樹のボーカル。それに反発するかのように、サディスティックな轟音を空間いっぱいに鳴らす3人。ART-SCHOOLの対照的な立ち位置は、オリジナル・メンバーが木下理樹一人になっても変わらない。

「8月にアルバムが出ます。なんていうか…うーん…新曲を3曲やります」と相変わらずおぼつかないMCの木下。印象的だったのは、3曲とも外へ外へと向かっていくサウンドだったこと。リバーブを多用し、どこまでも共鳴と拡散を繰り返すギターを聴いていると、それまでフロアに充満していた閉塞感や張り詰めた緊張感が、すっと消えたようだった。絶望の底から助けを求めるようにダークで甘美に響くART-SCHOOLの音楽が、どこかポジティブで牧歌的な空間を作り上げるものに変わりつつある、そんな感触の3曲だった。

おそらく、そうした彼らの変化は、昨年リリースされたミニ・アルバム『ILLMATIC BABY』(DOPING PANDAのYUTAKA FURUKAWAプロデュース)で、ディスコ・ファンクな4つ打ちビートなどにチャレンジし、芽を出したのだろう。もちろん安易に4つ打ちビートに傾倒していくという意味ではない。その変化は、終盤の“ロリータ キルズ ミー”やラストの“FADE TO BLACK”のような、初期のグランジナンバーの印象すら変えてしまった気がした。そう感じるのは、アレンジや技法に新しい工夫を凝らしているからなのか、彼らが精神的に何かを乗り越えたからなのかは正直よくわからない。おそらく両方なのかもしれない。でも、意識的にというわけではなく、様々な音楽の手法に触れていく過程で、偶然、自分たちの新しいサウンドを手に入れてしまいました、そんな印象を受けた。8月にリリースを控えた2年半ぶりとなるニュー・アルバムに、大きな期待を抱かせるには充分すぎるライブだった。(古川純基)
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