「最近、俺らは『ライブが楽しい期』なんですけど。今日も楽しみにしてきました。みなさま、どうか最後まで自由に楽しんでいってください!」
あの晴れやかな声で意気揚々と呼びかける斎藤宏介(Vo・G)の言葉に、開演早々から沸点越えの高揚感に包まれたZepp Tokyo満場のオーディエンスがなおも熱い歓声を突き上げていく――。
8月にリリースされたシングル『10% roll, 10% romance』のリリースツアーとして、10月8日・高知X-pt.を皮切りに来年1月の幕張メッセ公演まで24公演にわたって開催中の、UNISON SQUARE GARDENワンマンツアー「One roll, One romance」も早くも中盤戦。
その東京公演:Zepp Tokyo 2Daysの2日目のステージで繰り広げられていたのは、「3ピースバンド」の概念を遥かに超越した緻密さと獰猛さをもって炸裂する、ロックとポップの究極体験そのものだった。
シングル『10% roll, 10% romance』のツアー真っ最中にさらにシングル2作品『Invisible Sensation』、『fake town baby』を2週連続リリース、という前のめりな加速感を象徴するように、この日のライブの重要なカギとなっていたのはやはり“10% roll, 10% romance”をはじめとする最新楽曲群だ。
恐るべき音の密度と情報量を備え、ともすればカオティックでノイジーな音の濁流になってもおかしくないアクロバティックなアンサンブルのすべてが、眩しいメロディ&楽曲へと昇華されていく“10% roll, 10% romance”のマジック。8ビートのロックンロールを3人の才気によって極限進化させたような、実際のBPM以上にスリリングな“Silent Libre Mirage”の疾走感。田淵智也(B)&鈴木貴雄(Dr)のパワフルなビートとダイナミックなリフワークが渾然一体となって描き出す、“Invisible Sensation”の雄大なスケール感。そして、最新シングル曲の“fake town baby”のシリアスかつハードエッジなサウンドと《神様はいない 要らない いても 要らない/ここは誰の現在地だ?》という切迫したイメージがせめぎ合い響き合いながら編み上げる凄絶なロックの風景――。
何より、ただでさえ圧巻のプレイアビリティを誇り、ライブにおいても絶大な支持を集めている彼らが、自ら「ライブ楽しい期」と称する現在のモードそのままの、伸びやかな全能感あふれるプレイのすべてが、歓喜の衝撃的瞬間と呼ぶべきハイエナジーな躍動感に満ちていた。
「ツアー自体、結構空いちゃったんで……しかも、アルバムではなくシングルのツアーで回ってるということで、いろんな曲をやろうと思っています」という斎藤の言葉の通り、シングル曲/カップリング曲/アルバム曲含めキャリアを網羅するセットリストを構築していたこの日のライブ。
格段に輝度と訴求力を増した斎藤の歌とギターワーク。激しく弾み回るリズムパート以上に舞台上を跳ね踊りながら、楽曲に怒濤のバイタリティを注ぎ込んでいく田淵。ドラムの化身の如き鮮やかなアクションで強烈なドライブ感を体現していく鈴木……そんな3人が奇跡のようにギアを合わせて邁進していくバンドアンサンブルが、Zepp Tokyoのフロアを激しく揺さぶり、珠玉の熱狂空間を生み出していった。
MCでは「田淵くんの強い希望によって、バルミューダっていうメーカーのオーブントースターを持ち回ってて、楽屋に置いてあるんです」と明かしていた斎藤。「今日も待ち合わせ時間にちょっと遅れてきて、『どうしたの?』って言ったら、『ごめん! パン買ってた』って(笑)。ライブハウスに着くなり、スタッフ全員に『パン食べませんか?』って言って回ってて(笑)。おかげさまで、楽屋は今、ものすごくいい匂いがしてます(笑)」というエピソードにフロアがどっと沸き返り、会場の多幸感はよりいっそう高まっていく。
アンコールでは、「新曲2曲をリリースしてる期間、ツアーが2週間空いてたんですね。その2週間、何をしてたか?っていうと――新しく出たシングルの宣伝もそこそこに、さらに新曲を作ってたんですね。しかも、1曲や2曲じゃないっていう。しかも、どの曲もめっちゃカッコいい!っていうね」という斎藤の言葉に、オーディエンスからは驚きと感激の歓声が上がっていく。
「毎回曲ができるたびに『俺らめっちゃカッコいい!』って言えるって――UNISON SQUARE GARDENとしての天才な才能が集まってるんですよ。UNISON SQUARE GARDENを超好きになれる3人が集まってるっていうことだと思っていて。『UNISON SQUARE GARDENカッコいい!』って思い続けられる限りはきっと、ライブをやり続けていくことになると思います」
バンドの「これから」を見据えた斎藤の宣言に、フロアからは惜しみない拍手喝采が巻き起こっていった。
そんな斎藤に、何やらジェスチャーで訴える田淵。「え、ハードル上げすぎ? ああ、これ何かで見たことあると思ったら、(田淵が)オーブントースターのハードルをどんどん上げてったのと同じだね。『うーん、確かにおいしいけど……』って思ってたもんね(笑)。あの……そこそこの演奏でお届けします!」とさらに観客を爆笑で包んだところで、3人はアンコールももちろん最高の爆演で駆け抜けてみせた。ファイナルの幕張メッセまで、ツアーはまだまだ続く。次回公演は11/18・仙台PITにて!(高橋智樹)
終演後ブログ