2015年の来日以来、2年ぶりとなるアリアナ・グランデ公演。最新作『デンジャラス・ウーマン』で聴かせた、ひとりの女性アーティストとしての境地をあますところなくみせつけるライブとなった。
まずなによりも圧倒的だったのは、この日演奏した23曲のうち、17曲はすべて『デンジャラス・ウーマン』(ボーナス・トラック含む)収録曲で、今の自分はすべてこの作品にあると叩きつけてくる内容になっていたことだった。実際、アリアナがファーストから得意としてきたクラシックでロマンチックなボーカル・パフォーマンスを聴かせる"Moonlight"から、愛に溺れる官能を歌い上げる"Into You"までと『デンジャラス・ウーマン』はさまざまなアリアナの表情を見せる傑作となったため、今回のライブはアリアナのパフォーマンスの幅と奥行きをどこまでも堪能できる素晴らしいものとなった。
ほぼ定刻通りにライブは始まったが、まずはアリアナがフォト・セッションに応じている映像がビジョンに流れ、SEが流れる中およそ7分間のカウントダウンがテロップとともに始まる。いよいよ残り時間がなくなってくると映像の中のアリアナが観客に向かって煽り始めていくという趣向の凝らした演出となっており、大歓声の中"Be Alright"でライブは始まった。
ライブは4部構成となっていて、さまざまなアリアナの魅力をまとめて披露していくものになっていたが、まず最初はどんな辛いことも乗り越えられるという応援歌にもなった"Be Alright"で場を高揚させ、そこから男女の関係性の絡みやもつれを歌って刺激的なビートを誇る『デンジャラス・ウーマン』からの"Everyday"、"Bad Decisions"、"Let Me Love You"と続いて、黒のショートドレスにジャケットをケープのように羽織ったアリアナは今の自分のモードを明解にまずは打ち出していく。
これに続いて明るめの色の巻きスカートとトップスの上下に衣裳変えを行うと、相手の自分への思いが少ないと責める気持ちと自分にとって相手は永遠の男子だという思いが錯綜する"Knew Better"~"Forever Boy"のパフォーマンスを披露。ここで初めて『マイ・エヴリシング』からの"One Last Time"が取り上げられたが、デヴィッド・ゲッタのシンセ・リフの反復に乗せたアリアナがその歌唱力を発露してこの日のライブの最初の聴きどころとなった。
さらに、続いた『デンジャラス・ウーマン』の"Touch It"でその歌をさらにみせつけつつ、息が詰まるほどに募っていく相手への思いとその切なさを見事に歌いきってみせた。
後半ではまずは自身のレゲエ・ナンバーの"Side to Side"を披露してからジェシー・Jの"Bang Bang"のカバーへとなだれ込む展開を取りつつ、ところどころ長めにダンサーらの振り付けにも参加する時間帯となり、さらに"Greedy"、"Focus"とファンク・ナンバーへと続いてグルーヴの濃い時間帯となった。
終盤は"Moonlight"におけるアリアナのクラシックな歌唱力、"Thinking Bout You"ではレコーディングとはまるで比べ物にならないその表現力、そして名曲"Somewhere Over the Rainbow"では超絶的な歌唱を聴かせつつ、本編を締め括った"Into You"ではエレクトロ・ハウスでどこまでも官能的な愛を歌い上げてみせた。
アンコールの"Dangerous Woman"はまさにこのライブそのものを総括するようなナンバーとなり、アリアナの類稀な才能をその力量を思い知らされたこの日のライブを締めくくった。これまで可憐さやあどけなさがどことなく残っていたアリアナだが、そのパフォーマンスでひたすら押しまくって圧倒するこの日のライブはもはや若手R&Bの第一人者といってもいい内容のものだったと思う。もちろん、ポニー・テールでステージを闊歩する姿はどの瞬間を捉えてもこれまで通りかわいいものだけれども、その本来の歌の力と表現力が圧倒的な存在感を持つようになったところに感激した。(高見展)
〈SETLIST〉
1. Be Alright
2. Everyday (ft. Future)
3. Bad Decisions
4. Let Me Love You (ft. Lil Wayne)
Intro
5. Knew Better
6. Forever Boy
7. One Last Time
8. Touch It
9. Leave Me Lonely (ft. Macy Gray)
10. Side To Side (ft. Nicki Minaj)
11. Bang Bang (Jessie J feat. Ariana Grande & Nicki Minaj)
12. Greedy
13. Focus
14. I Don’t Care
15. Moonlight
16. Love Me Harder
17. Breakfree (ft. Zedd)
18. Sometimes
19. Thinking Bout You
20. Somewhere Over the Rainbow
21. Problem (ft. Iggy Azale)
22. Into You
Encore
23. Dangerous Woman