今年1月に初来日公演を行っていたロンドン出身のシンガーソングライター、イジー・ビズが、この5月には「GREENROOM FESTIVAL ‘17」出演、及び東京・大阪でのクラブクアトロ単独公演というスケジュールで早くも再来日を果たした。
本稿では、渋谷クラブクアトロ公演の模様をレポートしたい。
開演予定時刻ほぼきっかり、バックライトがイジー・ビズのシルエットを浮かび上がらせ、オーディエンスの喝采が上がる。
アルバム『ア・モーメント・オブ・マッドネス』の冒頭を飾っていたシングル曲“Diamond”からスタートだ。
ゆらゆらと身を揺らし、その印象深いハスキーボイスを届けてくる。湿り気を帯びた曲調ではあるが、イジーの歌声は凛とした響き方をしていた。
ジャジーで物悲しいキーボードのイントロにギターのカッティングリフと鋭いビートが加わり、バンドのパフォーマンスも一切のギミックなし、という丸裸な印象で“Fly with Your Eyes Closed”へと向かう。
バンドサウンドの中で、肩肘張らずに伸び伸びと歌声を泳がせるイジー。そしてアップテンポな“Naïve Soul”では、飾り気のないステージから立ち上るナチュラルな高揚感に誘われ、イジーと同様に身体をシェイクする姿が広がる。
「Hi,Tokyo! How are you?」とイジーも楽しそうに笑みを零すのだった。
フロアの高揚感もパフォーマンスの一部であるかのように、自由自在に制御するイジー。“Skinny”ではセクシーな振り付けのダンスも披露してみせるが、彼女のステージは驚くほどストロングスタイルだ。
すべての楽曲に深く印象に残るフックが仕込まれ、そのキャッチーな魅力を生演奏のダイナミズムで増幅させる。それだけなのである。
熱いギターソロも繰り出される“Adam & Eve”、そしてブルージーな曲調の中から狂おしいファルセットのコーラスを響かせる“What Makes You Happy”と、現代的でありながらも確かな肉体性を持つUKソウルを次々に披露し、今回の日本滞在の充実ぶりについて語るのだった。
スローな“Circle”にしても、イジーは機械のように正確なピッチコントロールを重んじるというより、その人間味あふれるハスキーボイスからキュートな魅力を滲ませるように歌う。
ドラムスの台座に腰掛け、甘いギターのバッキングに合わせて歌われる未音源化のナンバー“Confession Song”も、歌声の素晴らしさを十分に引き出すソングライティングであり、オーディエンスがこぞって酔いしれるような時間になった。
ホンネとのコラボ曲として発表された“Someone That Loves You”は、もともとエレクトロニックなダンスチューンだが、ライブではバンドの生の息遣いを活かしたパフォーマンスになっている。
エイミー・ワインハウスを彷彿とさせる“Lost Paradise”、そしてシャーデーのミクスチャー感覚を思い出させる新曲“Open to You”など、楽曲の多様性も唯一無二の歌声があればこそ、だ。
切迫感に満ち溢れた“Give Me Love”から、厳かなサンプリングコーラスに包まれて始まる名曲“Mad Behaviour”という流れは圧巻だった。
そして「じゃあ準備はいい? 一緒に歌ってね」と、掛け合いのコーラスを練習して突入する“White Tiger”。長尺プレイでがっつりとオーディエンスの歌声を誘う、見事な本編フィナーレだ。
アンコールでは、イジー自らがキーボードを奏でて素晴らしい新曲なども披露し、最後には“I Know”のフックでまたもや歌声を誘ってみせる。楽曲の核にある魅力を掘り起こし、誰にも似ないチャーミングな歌声で作り上げる1時間半であった。
(小池宏和)
イジー・ビズ @ 渋谷CLUB QUATTRO
2017.05.22