ティーンエイジ・ファンクラブ @ 横浜ベイホール

ティーンエイジ・ファンクラブ @ 横浜ベイホール - All pics by Kazumichi Kokei All pics by Kazumichi Kokei
ティーンエイジ・ファンクラブ @ 横浜ベイホール
ティーンエイジ・ファンクラブ @ 横浜ベイホール
前回が2009年のサマーソニックだから、実に約7年ぶりの来日公演となったのが今回のティーンエイジ・ファンクラブだ。こちらも6年ぶりとなった昨年リリースの最新作、『ヒア』を引っさげての最新ツアーということになる。

でも、7年ぶり、あるいは6年ぶりと言っても、音が鳴った瞬間にそれらが些細なブランクに思えるのがTFCというバンドの音楽の醍醐味だ。ツアー初日となった昨夜の公演も1曲目の“Start Again”(久々の日本公演に相応しいナイス選曲!)のイントロが鳴った瞬間、まるでポーズボタンが解除されたように「あの時」、「あの風景」の続きが始まるような感覚に襲われる。ノーマン、ジェラード、レイモンドが代わる代わるメイン・ボーカルを務め、掛け合いを披露し、2重、3重のコーラスを響かせる、そんなフロント3人の鉄板のフォーメーションが懐かしさと愛しさを呼び起こす一方で、“Hold On”や“Thin Air”といった『ヒア』の新曲ではフランシスのドラムがアルバム音源をぎゅっとタイトに引き締め、後ろ向きな懐古には陥らない、前へ前へと進めるドライヴの役割を果たすという、現在の彼らのバランスが最高だ。

ティーンエイジ・ファンクラブ @ 横浜ベイホール
TFCの音楽は変わらない、確かにその本質は変わらないのだけれど、今の彼らのサウンドのベースとなっているのは97年の傑作『ソング・フロム・ノーザン・ブリテン』(と言いつつ既にこのアルバムが20年前だけど)で、90年代前半のオールド曲は、『ヒア』の楽曲に比べると明らかにラウドだしノイジーで、『カソリック・エデュケイション』(1990)から『ヒア』までの彼らの27年分のキャリアを網羅した今回のセットリストも、ライブ・パフォーマンスとして聴くと意外なほどバラエティを感じた。90年代前半、アノラックとグランジの間で絶妙なバランスを見出していた若き彼らと、50代に突入し、人として当たり前に円熟した現在の彼らのサウンドは、表面的にはかなり異なってきているのだ。

ティーンエイジ・ファンクラブ @ 横浜ベイホール
ティーンエイジ・ファンクラブ @ 横浜ベイホール
でも、先に書いたように彼らの本質は全く変わっていないということを確認できたのも、今回のライブだった。TFCの自然体で流れるように綴られたメロディは、けっして無為に「流した」ものではないし、彼らのラウドギターやドラム、ノイズはけっしてメロディやリリシズムを潰す粗野な真似はしない。でもその一方で、彼らのギター・ポップはけっして100%無邪気に弾け飛ぶことはない。ノーマンやレイモンドのどこか屈折したボーカルに象徴されるように、温かくフレンドリーなリフやキラキラしたアルペジオは常に憂鬱を予感させるものになっている。この、白黒、高低、喜怒哀楽の区別を敢えて付けない曖昧さ、その曖昧の中で「適温」を保っていくのがTFCの音楽なのだと思う。そしてこの適温とは恐らく私たちにとっての体温のようなものであって、だから彼らの音楽はこうして常に、何時もタイムレスにしっくり馴染むんじゃないだろうか。

ティーンエイジ・ファンクラブ @ 横浜ベイホール
ティーンエイジ・ファンクラブ @ 横浜ベイホール
前半はPAのバランスが悪く、何度かハウったり中断したりしていたのだが、体勢を立て直して以降の流れはまさに無敵。というか、TFCへの信頼が満ち満ちた幸福なムードの中で新曲と往年のアンセムが入り乱れる展開で、“Don’t Look Back”ではノーマンのコーラスを受けて曲間でたまらず大歓声が巻き起こり、“About You”以降はもう会場のどの方向を見渡しても皆、笑顔・笑顔だった。『ヒア』の“I'm in Love”が“Ain't That Enough”に負けないクライマックス曲となり、アンセムがアップデートされたのも最高だったし、本編ラストの“The Concept”はもちろん大合唱!アンコール・ラストが27年前の楽曲“Everything Flows”だという〆もパーフェクトだろう。シーンの動向やトレンド、高速で移り変わっていくものの先頭を見極めるような音楽の聴き方も楽しいけれど、こうしてTFCのようなバンドのパフォーマンスに触れ、自身の基準値をリセットすることも本当に貴重だと感じた。

ティーンエイジ・ファンクラブ @ 横浜ベイホール
聴きたい曲はだいたい聴けたかな?と終演後にセットリストを見直してみたら、あの曲も、この曲もやっていなかったことに気づいた。でも、見直さないと気づかないくらい大満足のパフォーマンスだった。(粉川しの)

〈SETLIST〉
01. Start Again
02. Sometimes I Don't Need to Believe in Anything
03. Hold On
04. I Don't Want Control of You
05. Thin Air
06. Verisimilitude
07. It's All in My Mind
08. Don't Look Back
09. My Uptight Life
10. The First Sight
11. Dumb Dumb Dumb
12. About You
13. I Need Direction
14. The Darkest Part of the Night
15. Your Love Is the Place Where I Come From
16. Ain't That Enough
17. I'm in Love
18. Sparky's Dream
19. The Concept

En1. I Was Beautiful When I Was Alive
En2. Star Sign
En3. Everything Flows
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