──でもなぜ「エゴでアーティストなFurui Riho」のほうに舵を切る勇気を持てたんですか?2025年は大人になって、優しくあって、人を愛して、大切にして、悲しいことも抑えてって、平坦に生きることを望んだんです。でもだんだん「そんな自分は嫌だ」ってなってきた
最初は後者が優勢だったんですけど、2025年が、自分に仮面をつけた年だったんです。今作の中に“MONSTER”という曲がありますけど、2024年の終わり頃、人に対して暴力的な自分が垣間見えたことがあって⋯⋯あ、手を出してはないですよ。
──人に棘や正義を向けちゃったり、ということですよね。そういうことを“MONSTER”で歌っていますもんね。
それがすごく嫌だったんですよ。周りにもそういう人がいたりして、もう私はこういう人間でいたくないと思って。だから2025年は大人になって、優しくあって、人を愛して、大切にして、悲しいことも抑えてっていう、なるべく平坦に生きることを望んだんですね。それはすごく成長になったけど、私は昔から無邪気というか、子どもみたいなところがあって、楽しいところには突っ込んでいくし、悲しければ悲しいし、感情の方向がはっきりとしているタイプで。それだからこそワクワクできるし、曲も生まれてくるんですけど、結果的にそれを排除した1年だったんですね。
──だから歌詞もできない、というところにハマっちゃったんですね。
多分、自分を抑え込む生活が続いたから苦しんでいたんだと思うんです。でもだんだん「そんな自分は嫌だ」ってなってきたんでしょうね。だからさっきの話でいうと、後者が一生懸命抑えていたところに、前者が「もういいって」って感じで出てきて、“ハードモード”みたいな突拍子もないことを言う曲ができたんだと思います。
──“Hello”が2025年に出ることは前々から決まっていて、“Hello”をいかに丁寧に届けるか、“Hello”が出る1年をどう生きるかは、Rihoさんにとってすごく大事なことだったと思うんです。それもあって、いい子の仮面を被ろうとした自分がいたんですかね。
本当にそう。“Hello”があったからこそ、あれを超える曲を書かなきゃいけない、ちゃんとしなきゃいけないと思っていたんだと思います。
──よかったですね、仮面を打ち砕くことができて。
当時はつらかったんですけど、絶望を知ると深みが出ますよね。何も知らないで「美しい世の中」「愛」みたいなことを言うのは綺麗事だったと知って。そこからまた誰かを愛したり、世の中に希望を持つというのが、さらに上のステップへ行けたんだろうなって思います。
──2度目の“Rebirth”をしたくらいの感じなのかもしれないですね。だって今、“Rebirth”の《傷だらけになって初めて/見える景色があるんだろうな》という歌詞と同じようなことを言ってくれたじゃないですか。あの頃も「いい子」でいることを破って、嘘のない自分を大事にしようと決意したタイミングでしたよね。
また“Rebirth”しちゃいましたね。ひとつ壁を越えたと思ったら、また次の壁が来て、「なんでこれを登っているんだろう」と思うんですけど、振り返ったら全部に意味がある。全部が繋がっていて、無駄なことなんてなくて、今ここにいるんだなって感じます。
──やっぱり、よかったですね。“Hello”のあとに「売れる曲を書かなきゃ」みたいなマインドに引っ張られていたら、もしかしたら自分にとってもつまらない曲ばかりできていたり、自分の立場もメンタルも潰れていったりした可能性もあったかもしれないし。
その可能性は全然ありました。追い込まれて、限界突破して、エゴな自分が出てきてよかったです。
──つらいことやハードなことがあっても、“ハードモード”の最後の《君が聴く頃には笑い話だ/そうやって続くのさ/人生は 人生は》や、“そのうち”の《後から笑い話にしようよ》みたいな、いつか笑いに変えられると信じているRihoさんのスタンスがすごく素敵だなと思います。
絶対に解放される時がくるっていうのはわかっているんですよね。つらくても乗り越えた経験があって、その経験が意味のあることだったと知っているから。だからこそ、曲はポジティブで終わりたいっていうのが自分の中であって。曲を書いている時にこんなことは思えなかったんですけど、最後にこれを書いて自分でちょっと救われた感じがしました。
──今、さらっとすごいこと言いましたね。「解放される時がくるのはわかっている」って。
でもみんなそうじゃないですか。過去を振り返ったら、乗り越えられなかったことってなくないですか?
──そう言われるとそうですけど、そう信じられるのがすごいし、その心から音楽が生まれているという事実が「なぜFurui Rihoの音楽にこれだけのポジティブなエネルギーが宿るのか」の理由のひとつかもしれないなと思いますね。
──表題曲の“Letters”はどのタイミングで作った曲だったんですか?とにかく私は手紙を読むように歌って放出するので、1枚だけでもいい手紙があったら持って帰って、またみんなの生活の中で読んでほしい
いちばん最後にレコーディングしたのは“ハードモード”なんですけど、どっちがリード曲になるかわからなくて、ほぼ同時進行で作っていました。でも自分の中では“Letters”がアルバムの最後な感じがしているんですよね。というのも、これは最後の「残りHP 1」みたいな状態で作っていて。さっき「絶対に乗り越えられるから」って言いましたけど、この時は「そうじゃないかも」って思うタイミングで、自分の心の端っこにある希望を掴んで、なんとかして乗り越えて、いい日がくるという1%の望みで書いたような曲でした。
──そこまでどん底の気持ちになっていたんですね。
なっていましたね。《「この人生に意味はない」って/君の言う通りだね》って、本当にそう思っていましたから。希望に向き合うことにそっぽを向いていたというか、ずっと空虚でいたんですけど、ちょっとずつまた自分と向き合い始めました。誰も愛せなくなっちゃっていたし、曲も作れないし、何かやりたいとも思えない。そのエネルギーがない、アウトプットができない、という状態だったんです。でもちょっとずつ戻ってきた感じがしています。
──本当によかったです。今日Rihoさんの話を聞いて「希望を信じる」「乗り越えられると信じる」というのが、この『Letters』という手紙の何よりものメッセージなんだと思いました。
結局、そこが勝つと思いますよ。それが真実だと思います。
──4月のホールツアーは、どんなものにしたいですか?
アルバムには今までと違う曲たちが並んでいるので、ライブも方向性が変わる気がしています。これまで何回も来ている人も新しい体験ができるようなライブになると思いますし、それをやるのが楽しみです。今までを引き継ぎつつも、新たな私を見てもらえるんじゃないかなって思います。とにかく私はその日、手紙を読むように歌って放出するので、1枚だけでもいい手紙があったら持って帰って、またみんなの生活の中で読んでほしいなと思います。
──“Hello”みたいにポジティブなエネルギーを与える曲を作ったり、これまでのインタビューでもたくさんのポジティブな言葉を語ってくれていたりしたけど、ポジティブでいられるばかりじゃないとリアルを見せてくれることも含めて、「自分の人間味」というものを全部繋げた強い表現になっているのだなと思いました。
ありがとうございます。他ではあまり聞かれないことを聞いてくださるから、「そうか、私こんなことを思ってたんだ」って引き出されました。
ヘア&メイク=Maho Takishima