【インタビュー】新世代の実力派ボーカリストたちが火花を散らす。音楽シーンをひっくり返す気概に満ちた、紫 今 feat. yowa (CLAN QUEEN)“天獄と地極”をふたりで語り尽くす

【インタビュー】新世代の実力派ボーカリストたちが火花を散らす。音楽シーンをひっくり返す気概に満ちた、紫 今 feat. yowa (CLAN QUEEN)“天獄と地極”をふたりで語り尽くす
紫 今 feat. yowa (CLAN QUEEN)」。この並びを見た瞬間、熱い気持ちになったのは私だけじゃないはず。新世代を代表する実力派ボーカリストふたりが、友達として仲がいいのはファンの間で周知の事実だったが、ついに歌声を重ねるという。深い愛とその裏にある痛み、絶望への寄り添いと確かな希望の光、そういった人間や人生の多面性を表現できるのが紫 今とyowaというボーカリストたちだ。“天獄と地極”を書き上げたのは紫 今だが、そこには彼女なりの人生の哲学が込められていて、この曲を託せたのはyowaへの信頼があってこそ。「人間の感情が爆発しているような重い曲は流行じゃない」という見立てもある中で、圧巻の表現力を誇るふたりのボーカリストは今、そんな時代をひっくり返そうとしている。

インタビュー=矢島由佳子


人としゃべっていて、この人と馴染むかどうかみたいな感覚ってあるじゃないですか。ちょっとしゃべった感じで「なんか空気感が似てるかも」「友達になれそうかも」と思って(yowa)

──最初に訊きたいのは、なぜふたりはそこまで仲良くなったのか?ということで。『もしも紫 今が友達だったら』(YouTubeラジオ)でも話されていましたけど、2回目に遊んだ時にはもうお泊まりまでされていたそうですね。そこまでハモった要因はなんだったんですか?

紫 今 ガチの仲の良さだよね。

yowa そうだね。

紫 今 マイちゃん(CLAN QUEEN)も含めて頻繁に会っているんですけど、きっかけは、対バンした時(2024年2月11日開催「ざわめきプレイリスト」)にyowaにゃんが……。

yowa ナンパしました(笑)。LINEを交換して、ご飯に誘って。2回目の時に飼っている猫を見たいというのでうちに来て、本当は帰る予定だったんですけど「終電で帰るのめんどくさい」ってなって、「じゃあ、お泊まりいいですよ」って。

──対バンの時、yowaさんはなんで「ナンパしたい」と思ったんですか?

yowa 歌が上手かったから。あと、人としゃべっていて、この人と馴染むかどうかみたいな感覚ってあるじゃないですか。当日ちょっとしゃべった感じで「なんか空気感が似ているかも」「友達になれそうかも」と思って、それでナンパしました。

紫 今 ありがとうございます!

yowa 出会った時は(紫 今が)あまり顔を出してなかったから似た匂いを感じたのもあって、顔出ししないアーティストならではのスタンスについて話ができるとも思って。初めてご飯に行った頃は、今ちゃんが顔を出すか出さまいかの方向性について迷っている時期で、それについてもちょっと話したよね。実際は、今ちゃんの中でもともと決まっていた方向に向かっていけたんじゃないかなって思ってます。

──それはまさに私も気になっていたところでした。なぜ顔出しする方向に踏み切れたんですか?

紫 今 もともといつかは出したかったんですよ。そのタイミングや出し方と、どういうビジュアルやファッションで出ていけば紫 今というアーティストにとってよりいいのかをすごく悩んでいて。“魔性の女A”を部屋で歌っている動画とか、真っ暗な中で、ぼかしてはいるんだけどある程度顔が出ている動画が伸びて、「やっぱりこの髪型やメイク、この感じじゃん」って掴んでいった感じでした。

──では今さんが思う、yowaさんとここまで仲良くなれたポイントは?

紫 今 yowaにゃんは、すごく正直な人なんですよ。ストレートじゃない正直者、みたいな。嘘をつけるのにつかないでいてくれるタイプの正直者。私はちょっと人間不信なところがあって、「この人、優しいふりしてるけど、本当は思っていることがあるんだろうな」みたいなところが見える人は怖くなっちゃうんです。yowaにゃんも物事や人に対して考えるタイプではあって、繊細な部分もあるから「今のは嫌だったかな」とか察する瞬間もなくはないんだけど、最終的には嫌だったらマイルドに言うし顔に出すんですよ。だから溜め込んで爆発したり、急に縁を切ったり、そういうことをしないでくれる人なんじゃないかなっていう安心感みたいなものがある。

yowa ありがとうございます(笑)。

【インタビュー】新世代の実力派ボーカリストたちが火花を散らす。音楽シーンをひっくり返す気概に満ちた、紫 今 feat. yowa (CLAN QUEEN)“天獄と地極”をふたりで語り尽くす - 紫 今 ライブの様子(Photo by 郡元菜摘)紫 今 ライブの様子(Photo by 郡元菜摘)

CLAN QUEENのリスナーは、難しい言葉の表現や重くて複雑なテーマもちゃんと理解しにいく姿勢がある。そういう人たちと私の曲をがっつり聴いてくれているファンには届くと確信した(紫 今)

──yowaさんから「歌が上手かったからナンパした」という話がありましたけど、まさに“天獄と地極”は、新時代を切り開く女性ボーカリストふたりの掛け合わせが圧巻で、それでいて「紫 今らしさ」や「CLAN QUEENらしさ」のどちらかに寄り掛かっているわけではなく両方の魅力や世界観が重なり合った仕上がりで。そもそも今さんは、yowaさんと一緒に歌うことを前提にこの曲を書いたのか、曲ができあがってから「これはyowaさんと歌いたい」と思ったのか……どういう順番だったんですか?

紫 今 それで言うと、yowaにゃんと歌うという考えのもと作りました。ご飯に行った時に「一緒に曲を作って歌って、マイちゃんが映像撮って、ということをしたら楽しそうだよね」と話していて、それを実現させたいなと思っていました。AOi(CLAN QUEEN)くんとも曲を作ってみたかったんですけど、そこは今回スケジュールが合わなくて難しくて。でもyowaにゃんと歌えることが私にとってはすごく大きかったので、私とCLAN QUEENの通ずる部分と、逆にAOiくんがCLAN QUEENというバンドの中では書いてこないであろう歌詞やCLAN QUEENでは歌わないyowaにゃんの表現を引き出したいという、その2つの軸で“天獄と地極”という曲を書きました。

──「紫 今とCLAN QUEENの通ずる部分」と「AOiさんは書いてこないであろう部分」、それぞれどういうふうに捉えているんですか?

紫 今 AOiくんともプライベートでしゃべるんですけど、通ずる部分としては──孤独とか、闇とか、ひねくれちゃっている部分とか。作り手ならではのものなのかどうかわからないけど、「幸せになるの、怖いよね」みたいな話で共感することが多いんですよ。あとは美しさかな。CLAN QUEENはアートワークも含めて、人の汚さみたいなものを美しく表現しているバンドだと私は思っているので、そういうところも共通の部分として捉えていました。CLAN QUEENの曲はもともと好きで聴いていたんですけど、この曲を作った1ヶ月間はさらに聴きまくって、特にサウンドの部分は逆に影響を受けたと思います。テンポ感、ドラムのビート感とか、CLAN QUEENにとっては王道だけど私の曲ではまだ出したことない部分を取り入れてみました。

yowa 確かにサビ前とかはCLAN QUEENでやってきたものと通ずるなと思うんですけど、大枠は今ちゃんらしさがあって、「CLAN QUEENでこういう歌を歌うことはないんだろうな」という感じがしました。たとえばボーカルで遊んでいる感じは、CLAN QUEENではなかなかない。フェイクもないし、こんなにハモり合うこともない。すごく難しかったけど面白かったです。AOiのメロディも難しいんですけど、また違う種類の難しさだなって。AOiの曲がボカロ系の難しさであるなら、今ちゃんの曲は本当に「ボーカルの実力が試されます」みたいな曲。

紫 今 すみません、難しく作って(笑)。

yowa とんでもない(笑)。

紫 今 “天獄と地極”という曲名自体は、実は1年前くらいから私のメモにポンってあって。この題名は強いぞ、いいぞと思ってずっと温めていたんですけど、難しさがあるテーマなので、ちゃんと理解してくれるリスナーに向けて発信しないと意味がないと思っちゃって。でもアルバム曲にするのはもったいないくらい、自分の中では強い題名とテーマだったんです。CLAN QUEENのリスナーは、難しい言葉の表現や重くて複雑なテーマもちゃんと理解しにいく姿勢があると思っていたから、そういう人たちと私の曲をがっつり聴いてくれている今民(紫 今のファン)には届くと確信して、「ここだ」という感じで自分の中でいちばん難しいことに挑戦できました。

──今民だけじゃなくて、CLAN QUEENのリスナーもちゃんと信頼していたからこそ作れた曲だったんですね。

紫 今 本当にそうです。

yowa ありがとう!

紫 今 今までこのテーマの曲を出そうと思うタイミングがなかったのも、この時のためだったんだなって思いますね。ただ歌詞自体は、yowaにゃんと歌うという意識のもと書きました。もし自分ひとりでこの曲を出すことになっていたら、歌詞は違う方向になっていたと思います。

次のページ天国みたいな場所にいるように見えても、中を覗いてみたらぐちゃぐちゃかもしれない。その事実を知ることで、羨ましく思わなくてもいいようになる(紫 今)
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