──“ビーナスベルト”という言葉は、どこで思いついたの?今年は例年に比べて作ってなくて……それも、この一曲が超デカくって。この一曲が、100曲分に値すると思っちゃった
タイトルをつけるときに、空のイメージがあって。でも、「夕焼け」は……歌詞に《夕方》ってあるし、明らかに染まってる頬の色は、夕焼けの色って思われちゃうかなって。私、空の言葉辞典を持っているんです。
──そんな辞典あるの?
ありますあります。で、たまたま出てきたのが“ビーナスベルト”で。へえ、なんやろって調べたら、夕方や朝方に条件が揃ったときだけ見られるピンクと紫がかった空のことで。みんな見たことあると思うけど、私はあれもまとめて朝焼けや夕焼けやと思ってたんですよ。そうしたらビーナスベルトっていう名前がついているって知って、あ、これや! この曲にはこの空!って思ったんです。彼女の染まってる頬の色は、夕焼けのオレンジとも違うって思ってたから、ビーナスベルトの空を知って「これ!」って。
──ちゃんとあったね。
ありました。ほんとよかったです(笑)。みんな意外と知らない。でも、染まる頬は、この色しかないっていう。
──あいみょんは、定期的にJ-POPの王道を作るじゃない? 定期的に出てくることについてはどう思っているの?
まだ自分に新しく思い浮かぶボキャブラリーがあるんだ、発想力があるんだ、よかったみたいな(笑)。
──安心するの?
安心というか、ほんっとに私は家で鼻伸ばして生きてるので。すげえ、こんなこと思いついた、やったあ! すごいぞ!みたいな気持ちでいますね。でも今年は、例年に比べてそこまで曲を作ってなくて……でもそれに関しての焦りはないんです。大袈裟かもしれないですけど、この一曲が超デカくって。この一曲が、100曲分ぐらいに値すると思っちゃって。「この曲あるから作らんでいいと思う」ぐらいに言ってました。まあ、でも思いつけば作ります……これはほんまによくない言い方ですけど、ギター持ってコード弾いたら曲はできます。
──はい、いただきました。
いやいや(笑)。
──でも、それ以外言いようがないよね。
そうなんですよ。それに良し悪しがついてくるだけなんですよね。自分が作ろうと思ったら、なんでもベーって書けるんですよ。アホみたいな曲も、真面目な曲も、全部書けるんです。思ってることがいっぱいあるから。だけど、自分はいいと思ってても聴くのはリスナーだから、そこ(の良し悪し)はわからないっていう感じで生活してます。でも、曲作りは楽しいです。もの作りをするために生まれてきたんじゃないかなって思うぐらい、自分に向いてるって思いますね。アートワークもグッズも、ものを作ることが好きなんだなって思ってます。
──もう何年も前だけど、あいみょんがよく使ってくれた発言で「曲作りは流しそうめんみたいなもの」っていう。音楽を続けるのは、簡単やと思っちゃってるんです。デビュー前からやってましたし、自分で歌って作ってきて。でも、やっぱり、支えてもらうことが難しい。10年やってそう思いました
ああ(笑)。
──流しそうめんのように思いついた瞬間を逃さずものにできるかという。今は本当に、ワンフレーズを見事に掴んでいるよね。
私は作詞作曲同時なんですけど、どちらかというとワード先行ではあって。《明らかに染まる》というワードが思いつきました、それにメロディと歌詞を同時につけていきましょうっていうパターンも多いので、思いついたらワードを拾って。でも、そのワードが曲になるかもしれないし、アルバムのタイトルになるかもしれないし、ツアーのタイトルになるかもしれない。あるんですよ、メモ帳にワードたちが。それぐらい面白い言葉を思いつきます。でも、最近は迷子ですけどね。ツアータイトルもアルバムタイトルも、悩んで悩んでばっかりですもん。みんなが使ってなかったり、面白いな、かわいいな、って思えるくらいの言葉でいいんです。意味なんてないんです。意味はあとからついてくるでしょって感覚で、ツアータイトルはつけていますね。
──でもさ、《明らかに染まる》って思いついても、なかなかピンとはこないよ。
えー? めっちゃいい言葉だと思ったけど。
──めっちゃいい言葉なんだけど、《染まる》は《染まる》だけで成立してるじゃない? 染まってるじゃん、どう見ても。身も蓋もない言い方をすればさ。
日本語、面白いですね。いろんな言い換え方ができて。どう見ても染まってるって言い方もできるけど、《明らかに染まる》って言葉を組み合わせることによって、見たことがない情景になっている気がする。歌詞で想像力をかきたてたいので、《明らかに染まる》って歌うことで、みんなに「どういう状況?」って思ってもらえる面白さはあると思っていて。そういう言葉のパズルは考えていますね。
──素晴らしい。ど名曲、新たな王道。こういう曲をシングルとしてリリースできるチームの在り方とあいみょんの健全さ。あらためて最高ですよ。
まだまだ出したい曲はたくさんあります。私、ストックは死ぬまで減らないんです(笑)。あるべきタイミングでその曲たちを出せたらすごく嬉しい。いっつも言ってるけど、私は求めてくださってるところに行く。キャパオーバーをしない。嫌なんです、怖いんです。無理したくないですし。
──続けていきたいよね、何事もね。
私、音楽を続けるのは、簡単やと思っちゃってるんです。デビュー前からやってましたし、自分で歌って作ってきてるので。でも、やっぱり、支えてもらうことが難しい。10年やってそう思いました。合わない人もいるかもしれないですし、お客さんがつかないこともありますし。支柱を作るまでが、すごく難しいんだなって思って。だからこそ、ありがたみを感じますよね。長年足を運んでくださっているお客さん、支えてくれる地方のスタッフさんに、10周年は「ありがとうございました」って言いたいですね。
ヘアメイク=松野仁美 スタイリング=服部昌孝
撮影協力=BACKGROUNDS FACTORY、PROPS NOW
衣装協力=KAIKO(O 代官山 ☎︎03-6416-1187)
あいみょんのインタビュー全文は10月30日発売の『ROCKIN'ON JAPAN』2025年12月号に掲載!
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