田淵さんがリハーサルスタジオに入ってくるなり、「僕はみなさんのことを幸せにするためにやってきました!」って言ったんです。それがすごく衝撃的で(緒方)
──DIALOGUE+としての活動は決して本業の片手間でできるようなものではないし、当初から全力で取り組んできたのだと思いますが、最初にユニットへの参加の話を受けたときは、それぞれどんな想いでしたか?村上 私は声優になって2年目のときだったんですけど、歌うことに自信がなくて。むしろ音痴だと思っていたから、人前で歌っていいのかなという不安のほうが大きかったです。でも最初のステージでお客さんの前に立ってパフォーマンスしたときにすごく楽しくて。来てくれた方が笑顔になってくれたり、一生懸命に手を振ってくれたりする景色が私にも見られるんだと思いました。飯塚 本当にぱっと集められたユニットだったから、最初の打ち合わせのときにゆりにゃ(内山)やきょんちゃん(守屋)は震えていたよね(笑)。内山・守屋 あはははは。飯塚 おそらく私がいちばん年上だから「みんなを守らなければ」って思っていて。でもきょんちゃんは子役からやっているので、歴としては大先輩だったんですけどね(笑)。鷹村 私は声優としてのデビュー作がゲーム作品だったんですけど、それと同時期にDIALOGUE+への参加の話をいただいて。最初はとにかくみんなの足を引っ張らないようにと必死でした。レコーディングやライブも、毎回いっぱいいっぱいで、なんとかついていこうという想いで。緒方 私もDIALOGUE+が始まったときはまだまだ新人でした。もともと歌が苦手だったので、当初はステージに立つたびに自分のことが嫌いになったりもしていましたね。田淵さんが音楽プロデューサーになると決まって新体制になったときにすごく覚えているのが、田淵さんがリハーサルスタジオに入ってくるなり、「僕はみなさんのことを幸せにするためにやってきました!」って言ったんですよ。それが私にはすごく衝撃的で、アニメとか漫画の世界じゃなくて現実にこんな場面ってあるんだと思って、すごく嬉しくて。一緒に頑張ろうという環境をスタッフさんも作ろうとしてくださっているのがわかって、そのときにやれるところまでやり切りたいと思いましたね。──田淵さん、そのときのことって覚えています?田淵 はい(笑)。緒方 なんか、恥ずかしそうですね(笑)。田淵 (笑)。「幸せにしたい」と宣言したのは、そもそも「幸せってなんなんだっけ?」という答えに自分でたどりついてほしいというのがあったんですよね。でも、そのためにできるプロデュースワーク、スタッフワークっていうのは絶対にあると思っていて。バンドとかもそうなんですけど、やっている人の幸せの実感につながる環境づくりって意外とできていないと思うんです。僕はそれを環境の失敗だと思っている。なので、メンバーにその実感を持たせるためには、やっていて楽しいとか、この現場に来るのが好きとか、お金をもらえるからやるとか、なんでもいいと思うんですよ。そのモチベーションをスタッフサイドが作れるようにすることを意識して出てきた言葉が「幸せにします」だったと思います。緒方 すごくありがたかったです。田淵 8人もいるユニットで、メンバーのモチベーションを等しく保つというのはかなり難度の高いことですけど、それができたらほんと幸せだよなって。同時に僕は音楽を作る人間で、こういうものを届けたいとか、こういう人に届いてほしいというロマンみたいなものがあるので、そのふたつを両立していけたらいいなと。これは僕の生まれて初めての挑戦みたいなものなんです。今のDIALOGUE+は、振り付けのレベルもすごく上がっていて異次元なことをやっているという自負もあるし、「こんなパフォーマンスができる声優、ほかにいなくね?」って、本人たちが自覚してやることがすごく大事だと思っていて。めちゃくちゃすごいフォーメーションダンスを頑張ってやるということに感動する──そこで僕も夢を見られているんですよね。守屋 私も今、すごく楽しいです。最初は歌もダンスも本当にできないところから始まって、ダメダメすぎて悩むことも泣いたりすることもあって。でもそれ以前は、そんな気持ちになることはなかったんですよね。私は芸歴が長いので、なんでもやってみればいい感じにできるっていう自負があった。でもうまくできなくて悔しくて、自分の中からこんなにも喜怒哀楽の感情がいっぱい出てくるってことを、DIALOGUE+に参加して初めて経験したんです。すごく人間っぽい生活をしているなって思えて、そんな自分に新しく出会えたというか。この心境に至るまでには小説が書けるくらいにいろんなことがあったんですけど、今は本当に歌うことも踊ることも楽しくて、強くなった自分をみんなに見せることができているという実感があります。
──稗田さんはDIALOGUE+にはどんな想いで参加しましたか?稗田 私は子どものころからずっと音楽が好きで、バンド音楽もアニソンも好きで。その中でも田淵智也という人の書く楽曲が学生の頃から大好きでした。いつか声優になったとき、作品やキャラクターを通して、何かしら田淵さんの歌を歌えたらいいなという夢を持っていたんです。学生時代は田淵さんがLiSAさんや内田真礼さんに提供した楽曲をバンドで演奏したりもしました。そんな田淵さんがプロデュースをしてくれるなんて、そんなこと私の人生にあるのかというくらい衝撃で⋯⋯でもその反面、最初の数ヶ月は複雑な心持ちでしたね。声優ユニットやアイドルに憧れはあったものの、自分の地声はそんなにかわいいと思えないし、MVでかわいい表情を作るとか、ポーズを決めるみたいなことは、自分には向いてないなと思ってもいたので。当時は自撮り写真ひとつあげるのも嫌だったし。内山 懐かしいね(笑)。稗田 ね(笑)。最初は自撮りでも、口から下だけとか、目だけみたいな、なんか意味なく抗って尖ってた時期があったんです(笑)。それが今は全世界の人に自慢できるくらい、自分たちの楽曲やパフォーマンスが誇りに思える。ライブを観てくれる人たちも楽しんでくれているのが伝わってきたり、嬉しいお便りやメッセージをもらうようにもなって、私たちのライブや音楽を心の支えにしてくれているんだなと知ることができました。メンバーに対しても、自分も含めてみんな個性が強いからうまくまとまれるか不安だったけど、みんなすごく素直でいい人で、今はDIALOGUE+が家族みたいに大事な居場所になっています。内山 私は寧々とは違って音楽には触れてこなかったので、アニソンを歌わせてもらうということも、それがどれくらいすごいことか当時はわかっていなくて。歌もダンスも上手いメンバーが揃っている中で、自分だけ大丈夫かなっていうのはありました。でも、DIALOGUE+では生バンドでライブをさせていただくことも多いんですけど、バンドの演奏に触れることで、ただ楽しめばいいんだという気持ちになれてすごく救われて。そこからめちゃめちゃ楽しくなって、田淵さんにも「音楽好きになったよね」って言ってもらえるようになって、今は本当に楽しいです。田淵 音楽やライブに一緒に向かっている感じが増えたんですよね。与えてもらったことをこなすという受動的な思考からの脱却というか、全員が能動的に動いている。そういう姿を見ると僕も単純にやる気が出ます。踊りのつなぎとかも「もうちょっと練習したほうがいいよね」みたいなことを自分たちでやる場面が増えてきたと思うし、僕もそこはメンバーを信じて任せるようにしたほうがいいと思うようになってきていて。さっき守屋が言った「人間っぽい」っていうのは、ひとつの重要なキーワードだなと思います。僕自身もDIALOGUE+のライブを観ていて「人間っぽいな」と感じることが増えていて。それはライブのときの表情もそうだし、ファンへの伝え方もそうで、型にはまっていないというか。型があるのも美しいんですけど、自分がやるときにそれはあまりやる気につながらんなと思っていて。──DIALOGUE+のライブはほんとに人間の躍動感を感じるものでした。田淵 MCの喋り方とか、そういうのも含めてですけど、なんとなく「型」ってあるんですよね。その型にはまってしまうのはすごくもったいないなと。そうではないDIALOGUE+の人間っぽい魅力は、普段ロッキング・オンのメディアを読んでいる人にも何かしら響くものがあったりするんじゃないかと思うし、そういうユニットを作りたいとずっと思いながらやっています。──そんな中、新作EP『PENTA+LOGUE』が9月17日にリリースされます。この作品については、次回のインタビューであらためて聞きたいんですが、すごい作品ができましたね。声優ユニットとしての強みを活かしたエキサイティングな作品は、DIALOGUE+が新たなフェーズに到達したことを実感させられます。田淵 自分でも覚悟が決まった、というか。DIALOGUE+はきっと自分がプロデュースする最後のアーティストになるなと。楽曲提供やバンドでベース弾くとかはほかでも全然あると思うんですけど、これだけ深く関わるユニットというのは、たぶん人生最後だろうなと思っていたので、このあたりで自分も大きな挑戦をしてみよう、というのが今作の制作のきっかけでした。「豪華作家陣集結!」みたいなのってよくありますけど、それを本気出してやってやろうじゃないかと。ただ、「豪華作家陣集結!」って銘打てばファンが増えると思ったら大きな間違いで、そのアーティストが歌うからこそのものにしなければプロデュースは失敗なので、その意味でも「本気」を出した作品ですね。清 竜人、じん、玉屋2060%(Wienners)、宮野弦士という、自分にとっては、好きすぎて声をかけるのを避けてきたような、あまりに強敵な作家陣でしたけど。自分も40歳になってまわりに否定する人が誰もいなくなってきて、そこに甘んじていれば楽に生きられるんですけど、それでも緊張したり、ちょっと怖いなあと思いながら挑戦していくという経験を、この子たちと一緒にしたいというのもありました。──次回、メンバーの皆さんにも、この『PENTA+LOGUE』の話をたっぷり聞かせてもらいますね。全員 よろしくお願いします!──というわけで田淵さん、ユニゾンのライブ前の貴重な時間、ありがとうございました。全員 ええっ?緒方 これからライブなんですか?田淵 いま札幌です。おいしいチョコレート探して買っていきますね。全員 ありがとうございまーす!自分でも覚悟が決まった、というか。DIALOGUE+はきっと自分がプロデュースする最後のアーティストになるなと(田淵)
ヘア&メイク=AICON(清水有希子、福井亜依、笠掛桃子)
スタイリング=柏木作夢