何かにインスパイアされたり、過去の気持ちを思い出して書くことをし始めた(比喩根)
――『Titles』も、冒頭の“Like?”は躍動感あるビートが貫くライブ感のあるオルタナになってますよね。ジャスティン “Like?”はライブ音源みたいな感じだよね。レコーディングに向けた練習っていつも真剣に1個1個集中してやっていくんですけど、“Like?”はどんどん気持ちが上がってきちゃって、結局ライブの練習してたみたいになったんですよね。
――2分半っていう短さも印象的です。
比喩根 最近聴いてる人たちの曲がみんな短いんですよね。それで、2分とか2分半くらいの曲を作りたくて。その分1音1音のインパクトを意識して作ったんですが、上手くハマったかなと思います。
――この短さで恋心に戸惑う初々しさを歌ってるのがまたフレッシュですよね。
ジャスティン この曲を人に聴かせたら、「ええ~、かわいい曲!」って言われた(笑)。
比喩根 (笑)こういう曲、書いたことなかったから恥ずかしかったけどね。前にスタッフさんと話してて、「大人っぽい曲が結構多いから、年相応の歌詞も書いてみたら?」って言われて。私は大人っぽいとか意識してなかったんですけど、「じゃあ10代っぽい歌詞ってなんだろう?」って考えて、「恋でしょ」ってなった。それで、人と付き合う前の気持ちを思い出して書いていきました。長々と書くとピュアな想いを言葉で塗りかためてしまう感じがしたので、一文一文で心情が変わってぐちゃぐちゃの感じを伝えるようなアプローチにしました。19、20歳ぐらいの女の子感が出たのかなって思います。年齢を重ねるごとに、自分の感情を制御することができるようになってきてて、その分感情のふり幅が少なくなってきてるんです。それで、自分の感情のみでバリエーションを付けるのが難しくなってきてるところがあるので、何かにインスパイアされてみたり、過去の気持ちを思い出して書くっていうことをするようになってきました。ちゃんと引き出しを作る準備をしておかないと、ある日ガラッて引き出しを開けたら何も入ってなかったみたいなことになりそうだなと思ったので、いろんなことができるように少しずつやってみてはいます。
スタジオで出すとうるさいくらいの音でも、ライブだと迫力になるんだなって(玲山)
――いろんなアーティストとライブで共演する中でどんな学びがありますか?比喩根 めちゃくちゃ学んでます。特に技術面で学ぶことが多いです。あと、私はギター&ボーカルでこれまでハンドマイクで歌ったことはないですけど、いろんなライブを観て「いつかそういうことをしてみたいな」って思ったり。海外のアーティストのライブを観て、フロントマンのステージ上でのいい意味での傲慢さすら感じる立ち振る舞いがすごく印象に残って。「俺は勝手にやっていいんだ」っていう感じというか。映像でライブは観たことはあったけど、生で観るとまた全然印象が違う。それによって自分も「ちょっとかっこつけてああいうことやってみようかな」とか色々考えました。
ジャスティン 技術面で学ぶところもたくさんあるけど、何よりも印象的だったのは、かっこいいバンドの圧倒的なオーラっていうか。サマソニで初めて海外のアーティストと同じフェスに出て、圧倒的なかっこよさにびっくりして。特にThe 1975がヤバかったです。
比喩根 土砂降りの中、ジャスティンとふたりで関係者エリアみたいなところでめっちゃ飛び跳ねてたよね(笑)。
ジャスティン バカみたいな感想ですけど、「ああなりたいなあ」って思いながら茫然と観てました。ただただかっこよかった。
玲山 スタジオで出すとうるさいくらいの音でも、ライブだとそれが迫力になるんだなって思いました。「そんながっつりいっていいんだ」って。
比喩根 掴み方がエグいよね。私たちは今、曲を一所懸命演奏してお客さんに乗ってもらってる感じだけど、1音目から掴みに行くっていうかね。今まで、「このステージに立ちたい」と思ったことはあまりなかったんですが、大きい会場でライブを観て「うわ、いいな」って思うことがめっちゃ増えて。それで、chilldspotとしてああいう大きなステージに立ちたいな、立つしかないなって想いが生まれてきました。
玲山 僕は、もっと演奏が上手くなって余裕を持ってライブができるようになりたいなって思いました。今は緊張と楽しさが半々ぐらいなんですけど。
小﨑 僕も同じで。動きの練習とかもしてるんですけど、ライブ経験が少ないっていうこともあって、本番になると演奏することに必死で動きが小さくなって、余裕がないんですよね。でも、いろんなアーティストの方のライブを観ると、余裕を感じるし、めちゃくちゃ動いてて、何より楽しそうなんですよ。たとえばKing Gnuの皆さんとか、もちろん演奏力もすごいんだけど、一人ひとりのオーラもすごくて。それこそベースの新井(和輝)さんも結構動きながら演奏してて、すごく楽しそうで。それによってお客さんも盛り上がるし。大きな舞台が似合って、かつそれを楽しめるようなバンドになりたいですね。
ジャスティン 僕は今焦りが80、90%を占めていて。
比喩根 ドラムは特に大事な楽器だからね。
ジャスティン 僕結構ネガティブな性格で、緊張することも多いんですけど、King GnuとかThe 1975の皆さんは――本当のところはどうかはわからないですけど、「演奏が怖い」って思って弾いているように見えなかったんです。それぞれプレイスタイルも違って、叫ぶ人もいれば、グワーッてひとりの世界に入り込んでいるような人もいて。でも共通していたのは、何かを恐れてる感じがしなかった。僕ももっと自信を持って演奏できれば楽しくなるだろうし、理想像に近づけるんじゃないかなと思いました。とにかくめちゃくちゃ刺激は受けてます。
比喩根 私たちはライブをちゃんとやるようになってからまだ1年くらいだけど、お客さんは同じフェスに出ているアーティストっていう同じ目線で観ているところもあると思うので、ジャスティンの焦っちゃう気持ちはすごくわかる。出させてもらえることはすごくありがたいので、その時その時の自分たちのベストを出したいですね。結構ドタバタではありますけど、この1年間いろんなことを吸収して、自分たちとしても成長できてると思っていて。それぞれいろんなことを抱えながらも、メンバー同士高め合って、自分たちなりにもっと楽しんでいきたいですね。
chilldspotが3rd EP『Titles』について語ったインタビューは、9月30日(金)発売の『ROCKIN'ON JAPAN』11月号にも掲載!
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