自分は「構成が見えるタイプ」で樋口は「歌が見えるタイプ」やから、一緒に作ったほうがバランスのいい曲ができるのかなって(マツムラ)
――アンサンブルがより密接に絡んでいる感じはありますよね。安田さん作曲の“紫陽花”では、ギターとベースがユニゾンになったり離れたり、っていう絶妙なアレンジのパートが印象的で。安田 (“紫陽花”の)ギターとベースが絡むところは、そもそも自分はギターソロやと解釈して送ってて。「ギターソロ弾いてほしいなあ」って思ってたんです。でも、黒野はそもそも「ここは頭のフレーズが来るところやと思ってた」っていう話をしてて――。
黒野 ユウスケから「イントロでやったフレーズをここで崩さず弾きたいんで、ベース何かやってや」っていうのがあって。前回はわりと、ギターとベース同時にフレーズを考えてたんですけど、今回はベースを先に考えてから、ギターを乗せるみたいな感じで作って。ユウスケがあとから乗せたほうが、めっちゃベースに絡み付くフレーズを乗せてくれるんで、気持ちいいんです。
――“ラブレター”は樋口さんとマツムラさんの共作ですよね。
安田 たぶん“ラブレター”が、このアルバムの中でいちばん最後にできた曲ですね。
マツムラ 他の曲のプリプロをしてる時に作った曲なんで。レコーディングする2日前ぐらいにどうにか作った感じですね。
安田 プリプロからレコーディングまで、ゼロタイムでパーン!って行く感じやったんですけど。プリプロが3日間あって、初日に集まった時に「もうちょっとテイスト違う曲ほしいなあ」ってなって。全員で同じ、ワンフロア貸切みたいなところに泊まってたんですけど、樋口とユウスケが先に帰って、俺もドラムのアレンジ終わって帰ったら――リビング的なところにすごい量の酒の缶が並んでて。ギター持ってウンウン言ってるユウスケと、パソコンの前でウンウン言ってる樋口がいて(笑)。
マツムラ 結局、朝までかかったから(笑)。(曲が)できて救われた、俺と樋口は(笑)。
――自分ひとりで曲を作るのとは違う?
マツムラ そうですね。僕は全体の曲構成を頭の中である程度妄想してから、ベードラ(キック)から組み上げていって、メロディ入れて、ギターは最後に考える、ってやっていくんですけど。樋口はボーカリストなんで、弾き語りから作っていくんです。それぞれ「コードとか構成が先に見えるタイプ」と「歌が見えるタイプ」やから、一緒に作ったほうがいいバランスの曲ができるのかなって。
――バンドも長く続けていくと、いつもと全然違うテイストの曲ができても「こういう曲はバンドの雰囲気に合わない」って外したりしがちですけど。“hey my friend”を聴く限り、WOMCADOLEの場合はそれがなさそうですよね。
安田 そうですね。なんか……自然と全部、「こんなんできるんや、自分」みたいな感じはありますね。インディーズの頃とか俺、サビで全部ツーバスでドドドドって踏んでる曲もあったし(笑)。おもろそうなゲームとかおもちゃがあったら、遊びたいじゃないですか。そういう感覚を音楽でやってる4人、って気がしてます。4人全員でそのおもちゃで遊んでるからWOMCADOLEやし。
「俺らはこういうバンド」って決めると、そこでしか遊べないんで。常に貪欲でいたいし、かと言って誰かに媚びたりもしたくない(安田)
――マツムラさんはいちばん最近の加入なので、WOMCADOLEを外から見ていた時間もあったわけですけども。他のバンドと客観的に比べて「ここが違う」と感じたポイントは?マツムラ そうですね。僕が観る側やった時は――シンプルに音量が違いましたね。
安田 いちばん荒れてた時やったもんな、ユウスケが入る前。ライブで俺、自分のキックの音聴こえんかったもん(笑)。
マツムラ おかしかったもん、音量でかくて。リハーサル始まった時点から(笑)。でも、入ってからのほうがいろいろ気づきましたけどね、「こういうのもできたんや」って。外から観てる時は、人間自体は安田のことしか知らなかったんですけど。『ヒカリナキセカイ』の時からそうですけど、いざ入ってみたら、「“doubt”みたいな曲もできるんや!」っていう。
安田 樋口が弾き語りとかでやってる曲に「俺その曲好きやから、バンドでやったりせえへんの?」とかも言うし。自分らで「俺らはこういうバンド」って決めると、そこでしか遊べないんで。常に貪欲でいたいし、かと言って誰かに媚びたりもしたくないし。自分らがいいと思ったものを、単純に各々が「これがいちばんかっこいいから」と思うアレンジで、やっていきたいですね。
――それってやっぱり、メンバーとしても「自分の感情を何ひとつ押し殺さなくていい」という感覚につながっている気がするんですよね。
安田 俺らはたぶん、お互いがお互いのことをめちゃくちゃ尊敬してるというか――全員かっこいいし、かっこいいことやってる奴らの言葉は信用できるから。そういう奴が持ってくるフレーズがダサいわけないしなあ、みたいな感じですね。
――信用しているし、お互いに好きな感じは出てますよね。
安田 そうですね。普通にメンバーの家で集まったりするし。樋口はよくわからんベッドで寝るし、ユウスケはソファでギター持ちながら寝てるし、俺は寝袋で寝るし――。
黒野 で、俺は朝、勝手に樋口の車乗って帰ったし。
安田 ほんまやで!(笑)。樋口が寝てるのに、樋口の車がないっていう。あとで聞いたら「朝7時くらいに帰りたくなって、アシがないから、樋口の車勝手に借りて帰ったわ」って(笑)。
黒野 一応、樋口には言ったんですけどね。
マツムラ 100回くらい舌打ちしとったもんな。
安田 ……っていう自由なバンドです(笑)。
――(笑)。でも、こういう4人の磁場だからこそ生まれる音楽だっていうのがよくわかりました。ドキュメンタリーとかで密着してみたいですね。
安田 いやあ、マジで一回やってみたいですね。
黒野 めっちゃ身構えそうな気するけど……。
マツムラ 大丈夫ちゃう? 撮れ高めちゃくちゃあるか、まったくないかのどっちかやで。
――撮れ高だけはめっちゃあるけど使えない、みたいなね。
マツムラ そうそう。誰か絶対、池とか飛び込んだりするやろうし(笑)。