The fin. 最新作『Through The Deep』で再び浮かび上がる、そのユニークな感性(2)
海外に行くと、いつもは見てないものが自分の中にいっぱい入ってくる。それを経てから曲を作ったり、ミックスしたりすると、今まで出せなかった音が出せる
――この独特の音の質感は、どういうイメージから生まれていくんですか?
Yuto The fin.を始めたぐらいの時からずっと思ってるのは、自分が見たものとかの情報の感じを――自分の感情もそうなんですけど、全部音とか曲とかにしたくて。でも、それって普段から観察をしてないとできなくて。最近すごく感じるのは、服とか、机とか、そういうテクスチャーの感じが、全部サウンドになるんですよね。紙を擦った時の粒子が粗い感じとか、この布だともっと粒子が粗くてとか、自分たちが生きてる世界の情報量を敏感に感じ取って、それを全部トランスレートして、曲として全部出していくっていうか。デザイナーの友達がいるんですけど、なんか急に1枚のテクスチャーのサンプルみたいな、砂でザラッとしたようなものを出してきて、「これやばくない?」「うわ、この感じやばいな!」とかいう話をしたりしますね(笑)。めっちゃマニアックなんですけど。
――(笑)。
Yuto でも、そういうのを見ると、頭の中でだいたい全部音になるんですよね。「情景描写的」って言われることが多いんですけど、それって結構そういうことで。「そこにあるもの」を音として出してて、歌詞に自分の内面をリアルに出していくっていう。そういうプロセスを、普段から大切にしてて。海外に行ったりすると、いつもは見てないもの、見てない感覚が、自分の中にいっぱい入ってくるんで。それを経てから曲を作ったり、ミックスしたりすると、今まで出せなかった音が出せるとか……そういうのは、普段から趣味みたいにしてて(笑)。自分の表現できるものを全部使って、1曲2曲と作っていきたいなあと思ってるんで。
――そういう感覚を音に落とし込んでいくのは、ちゃんと自分の表現の方法論を確立して、普段から研ぎ澄ませていないと無理ですしね。
Yuto そうですね。だから、いつも実験してます。自分でミックスしてるっていうのが、そういう面ではすごく大きくて。ミックスするっていうところまで、俺は作曲やと思っていて。そこでそういう感覚が活きてきたりするし。ギターを録ったりしても、そこからガンガン音を変えたりしてるんですよ。すごいエレクトロニカ的なミックスをしてたりとか……自分の曲はその段階で結構変わっちゃうんで、そこは大事にしたいなあって。
――ソングライターでもありデザイナーでもあるんでしょうね。
Yuto そうですね。音をデザインするのが、すごい好きですね。
――Yutoさんがデモを作るのは、その感覚をより誤解なく共有するために必要な作業だったっていうことなんでしょうね。
Yuto そうですね。前から結構、俺がデモを作ってたんですけど。今まではどっちかって言うと、投げやりやったんですよね(笑)。もう、曲を作るのが精一杯やったから、ワンコーラスぐらい作って終わり、みたいな。で、それをスタジオに持っていって、みんなであれこれして、っていう感じやったんですけど。やっぱりこう、自分の中で見えてきたものが多くて。機材とかもいろいろ手に入って、自分でデモを作れるようになったのが、アルバムの後半ぐらいで。そこから結構変わってきたかなって。

一時的なインスタントなものよりは、もっとリアルな部分が何かしらあるようなもの――作るんやったら、そっちを追求したい
――ちなみに、このEPのレコーディングはいつ頃?
Yuto あれいつやったっけ?
Ryosuke 6月ぐらいに3曲録ってなかったっけ? “White Breath”“Divers”“Anchorless Ship”の3曲は早めに録ってて――。
Yuto その他は結構最近やんな。でも、ミックスは全部やり直して、最近やったやつなんですけど。
――じゃあ、最終的には海外の経験を全部踏まえた上で、今回のEPのサウンドデザインを決めたわけですね。
Yuto そうですね。そこがやっぱり必要やなと思って。その時期にパッとやって良かったものって、今の自分と違うので、EPとして出すとなるとやっぱり違うかなあって。あと、“Divers”はベースを録り直したんですけど、ライヴの感じを聴いてて「もう一回録ったほうがいいんちゃうか?」と思って。
――やっぱりそれによって、The fin.の「今」の感じがよりくっきりと出てるし、ここから先を占う上でも重要な作品になってると思いますね。2016年、日本の音楽シーンに真正面からアートを提示していく上でも。
Yuto まあ、どうなるかわかんないけどね(笑)。でも、2ndアルバムはもっとまとまったものっていうか、もっとひとつの方向に向かったものになると思うので、楽しみにしててほしいですね。
――「エンターテインメント空間だから盛り上がるぞ!」っていう、テンション上げないと聴けない音楽とか、楽しい時しか聴けない音楽とかではないですからね。時と場合を選ばず、聴く人の生活にユニバーサルに寄り添っていける音楽だと思うし。
Yuto そうですね。リアルなところを出そうとしてるんで、そこはやっぱりアトラクション的なところじゃなくて、誰かまったく知らない人の人生でも、そこのパートになれるようなものであってもいいかなって。どっちかって言うと、自分が大事にしてた音楽もそっちなんで。一時的なインスタントなものよりは、もっとリアルな部分が何かしらあるようなもの――自分も作るんやったら、そっちを追求したいっていう感じですね。
――ありがとうございました。前回のRO69のインタヴューがThe fin.の「上京物語」だったとすれば、今回は「越境物語」ですかね。というか、「越境したら帰ってきたくなくなった物語」?
Yuto はははは。どこに行くねん!っていう(笑)。でも、日本を捨てるなんていうつもりは全然ないんで。日本ではちゃんとファンもいて、ライヴもできて――それはもっと大きくしていきたいし。ちゃんと続けていって、それと並行して海外でもしっかりやっていく、っていう感じでやれたらと思いますね。
――行く行くは、この音楽を聴きながら数万人が、熱狂するんじゃなくてただゆっくり揺れてる、っていう風景も見てみたいですしね。
Yuto そうですね(笑)。一回そういうのを見ると感動するやろうね。
Taguchi そうやねえ。俺らも見たいわ(笑)。

ミュージックビデオ
リリース情報

『Through The Deep』
NOW ON SALE
¥1,500(税別)
RDCA-1041
1. White Breath
2 .Divers
3. Through The Deep
4. Heat
5. Anchorless Ship
6. Night Time (Petite Noir Remix)
ライヴ情報
「Through The Deep Tour」
2016年4月1日(金) 心斎橋 Music Club JANUS
2016年4月2日(土) 名古屋 CLUB UPSET
2016年4月9日(土) 渋谷 CLUB QUATTRO
2016年6月10日(金) 台北 THE WALL
2016年6月16日(木) 仙台 CLUB SHAFT
2016年6月21日(火) 広島 4.14
2016年6月22日(水) 福岡 The Voodoo Lounge
提供:ヒップランドミュージックコーポレーション
企画・制作:RO69編集部