えっとごめんなさい、コレ私の知ってるクラウド・ナッシングスの新譜で本当に間違いないでしょうか?――と思わず確認したくなるような、「進化」と呼ぶより「別物」と呼んだほうがニュアンスとして正しい、そんな驚きの新作が到着してしまった。そもそも3年前にオハイオ州クリーブランドに住む18歳のディラン少年の宅録プロジェクトとして始まったのが、このクラウド・ナッシングスである。デビュー・アルバムに詰め込まれていたのはローファイでぎくしゃくとファニーなポップ・パンク、つまり思春期に自意識を拗らせたナードの典型的な逆噴射アルバムであって、初のスタジオ・レコーディングの喜びと焦りが素直に詰まった作品だった。対する本作は初のバンド・レコーディング、しかも指揮したのがスティーヴ・アルビニとくれば全くモードが違うのも当然かも。思いっきりラウド、好きなだけノイジー、気が済むまで走り、延々続くインプロのゴールは誰も知らない……みたいな、各所リミッターが一斉に解除されたとんでもないアルバムになっている。世間知らずの頭でっかちナードが遂に世界を知った、そんな感動すら覚える一枚です。(粉川しの)