90sと関係ない今のロック

ザ・メトロス『マネーあれば憂いナシ!』
2008年08月27日発売
ザ・メトロス マネーあれば憂いナシ! - マネーあれば憂いナシ!マネーあれば憂いナシ!
『rockin’on 08/8月号』のインタビュー記事でも、7月号の新人紹介記事でも、これまで本誌に掲載してきたザ・メトロスの写真は、そのコックニー・アクセントとルードボーイなファッション、そしてもろロンドン・パンクなサウンドを象徴した、がさつで不良で貧乏臭いけど、超クールな白黒フォトだったのに、カラーになったら途端にこれ←かよ? ザ・メトロスのデビュー作『モア・マネー・レス・グリーフ』なんだけど、まず聴く前にジャケットを見ただけで脱力してしまうのが残念。「金あれば苦労なし」という皮肉たっぷりのタイトルを、さらに皮肉を込めて表現しているのはわかるけど、これちょっとダサ過ぎないか。内容は、EPに輪をかけてオシャレなのに。

クラッシュやジャム、ドクター・フィールグッドに、スペシャルズに、デキシーズに、さらにはコックニー・リジェクツみたいなB級Oiを踏襲した、まるで90年代はなかったかのように、あの時代のチープ&ナスティな音と香りを惜しむことなく、わっかりやすい8ビートに乗せて放射するザ・メトロス。メンバーがまだ10代というのがすごく納得できる、ポジティビティとナイーブさが同居する溌剌としたサウンドだが、羅列したバンドからわかるように、その手の音楽に対する造詣はかなり深いようで、その無邪気で奔放な悪ガキっぷりとは裏腹に、実は、かなりのお利口さんと見た。それだけに彼らには大いに期待する、ほとんどのパンク・バンドが実現することができなかった、“この先”を見せてくることを。彼らのこのセンスならそれをやってのけてくれると思う、頭さえ良ければ。(内田亮)
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