聴いていると、胸が熱くなり、喉元が締め付けられ、手の甲を血がどくどくと流れるのを感じる。PCを立ち上げなくても、ケータイをいじらなくても意識が世界中に広がり、繋がりたい誰かと繋がっていくのを確かに感じる。抗うつ剤を飲まなくても心が上を向き、闇も光の産物なのだという事実が正しく認識できる。ロックはこういう音楽だった。優れたロックを聴くということはこういうことだったということが蘇る。アーケイド・ファイアは凄い。
前作『ネオン・バイブル』が緻密なサウンドだったから、より詰めたサウンドでくるかなと思ったが、逆に荒削りなサウンドになっていて意表を突かれた。逆にメロディーと歌詞は世界遺産に指定されてしかるべきレベルで、音楽を聴いているということを忘れてしまうぐらいに究極の純音楽的な体験をもたらす。もう音源を受け取ってから、このアルバムしか聴いていない。少なくとも聴く「必要」を感じるのはこのアルバムだけだ。あまりにもレベルが、次元が違う。
アーケイド・ファイアだけが真にポジティブなロックを鳴らしている。それはなぜか。それは彼らが「取り戻す」という明確なテーマを持っているからだ。生の尊厳が、生きる意味が、存在の誇りが、出会いの喜びが、未来への希望が、失われたのならば取り戻すんだという十字軍のように明確なモチベーションがあるからだ。ノスタルジックで、打ちひしがれ、同時に壮大で、炎のように熱い彼らの音楽のすべての理由はそこにある。(山崎洋一郎)