踊るもよし、浸るもよし

ホット・チップ『ワン・ライフ・スタンド』
2010年02月03日発売
ALBUM
ホット・チップ ワン・ライフ・スタンド
チャールズ・ヘイワード(ディス・ヒート)のゲスト参加の一報が話題を呼んだ4作目。実際にどう絡んだかは手元の資料ではわからないが、他にもジ・インヴィジブルズのドラマーやスティールパン奏者が参加したという経緯からは、「本来のダンス・ミュージックの精神を取り戻したかった」と彼らが語る通り、本作がどこかプリミティブな熱気を帯びた仕上がりになったのにも頷ける。昨今の過度に加工されたエレクトロに対する違和感も、彼らを“原点”に立ち返らせた要因のようだ。そうした変化もあり、あらためて魅力を再確認したのがアレクシスのボーカル。ロバート・ワイアットやピーター・ガブリエルも魅了したその歌声こそ、彼らを無比のダンス・アクトたらしめる最大の美点にほかならない。それはたとえば、同じくDFA所属のヘラクレス&ラヴ・アフェアがアントニー・ヘガティを必要としたように、ダンス・ミュージックにワイルドでデカダンな美の復権を告げる歌声だった。ソウルやハウス、ディスコ、ゴスペル……あらゆる熱狂に彩られたこの享楽的な音楽は、ゆえにエレガントな艶気を放ちリスナーを魅了してやまない。(天井潤之介)
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