チェンジ!の次元が違う

ノラ・ジョーンズ『ザ・フォール』
2009年11月11日発売
ALBUM
ノラ・ジョーンズ ザ・フォール
たとえ未だ方向性の定まっていないインディ・ロック・バンドだったとしても、ここまで作風を大胆に変貌させる例は滅多に存在しないのではないか。2年10ヶ月ぶりとなるノラ・ジョーンズの最新作における彼女の変化とは、かくもドラスティックなものだ。本作のノラはピアノでもジャズでもない。ウィスパリング・ボイスの美貌の歌姫でもない。一言で言うならロックだ。グルーヴの効いた、随所でアメリカーナやネオ・フォークともシンクロしながら紡がれる、極めてオルタナティヴなロックだ。それをグラミー・シンガーである彼女が、デビュー以来3600万枚のCDを世界中で売ってきた彼女が、過去のイメージをあっさり捨て去りさらりとやってしまうのである。しかも、むしろ本作の方向性こそが本来の彼女の進むべき道だったのかもしれない、そう思わざるを得ない凄まじいクオリティでやりきってしまうのである。

本作ではノラ自身がギターを弾いている。リー・アレキサンダーとの長年のパートナーシップを解消し、バンドも総とっかえしている。新たにノラの元に集ったのはジャクワイア・キングであり、共作者はたとえばライアン・アダムスであり、オッカヴィル・リヴァーのウィル・シェフである。徹底的かつ絶妙な新体制だろう。

これは最早「ノラにはロックな側面もあったんだね」とかいう程度の問題ではないのだと思う。ノラ・ジョーンズという才能のキャパは、普通なら不可能と思われるジャンルの横断を当然の振れ幅に変えていくのだ。中でも白眉はウィルとの共作ナンバー、“スタック”。(粉川しの)
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