ストロークスほど、ひいてはジュリアンほど、ロック・バンドとしてのキャリアについて悩まされた人も珍しいんではないだろうか。だってデビュー作で、ある意味完璧なアルバムを鳴らしてしまったのだ。その後になにをやればいいというのだろう。セカンドのときはまだ、そうしたプレッシャーを外野から見てとれることはあんまりなかったが、サードのときは明らかに悩んでいるような印象を受けた。でも、ストロークスが姿勢として一貫していたのは、決してプロの顔をしなかったことだ。彼らはロックンロールをやるときも、バンドとしてのアンサンブルを追求するときも、マス・ロック的なアプローチにいったときも、あくまでリスナー目線で、こんなロックンロール・バンドがいてほしいのにという欲望を具現化し、バンドをもう少しタイトにしようと普通に考え、今の自分たちのモードとしてマス・ロックが好きなんだとやってみた。どれもが有効だったとは思わないが、プロ側の論理ではなく、聴き手の論理で作ったからこそ、彼らのファーストは今もあんなに美しいんだと思う。
本作はその意味でジュリアンにとっての初めてのプロ宣言である。なにもそれはやる側の論理を押し付けることではない。あくまで聴き手として今作でもいろんなジャンルにアプローチしているのだけど、絶対に音楽を続けていくという意志に本作は満ちている。なにもテストで100点ばかり取らなくてもいい。でも、泥臭くても音楽だけは続けていく。そんな宣言に本作は聴こえる。僕はこういうジュリアンが好きだ。(古川琢也)