ザ・ストロークスの新作『Reality Awaits』が先週末ついに発売となった。メンバーのインタビューはあまり見かけないけど、ジュリアン・カサブランカスが、コメディアンのビル・バーのポッドキャストに出演して、新作について少し語っている。短いけど貴重なので紹介したい。新作が発売時に、ミュージシャンが決まって出演するような定番番組ではなく、あえてコメディアンのポッドキャストを選ぶところが、いかにもジュリアンらしい。また、その少し前に、新作とは直接関係ないけど、オックスフォード・ユニオン(主にオックスフォード大学の学生を会員とする弁論団体)でスピーチを行い、Q&Aにも応じている。そこで、今年のコーチェラ出演時、最後に政治的メッセージの強い映像を流したことや、その理由について語った。さらにそこでも触れられていたけどNYの地下鉄内で収録されるYouTube番組『Subway Take』にも出演している。新作にも政治的メッセージが見え隠れするだけに、ジュリアンの最近の心境を読み解くためにも、いくつか紹介したい。それぞれ映像を見れば分かるが、自分が好きなコメディアンによるインタビューにもかかわらず、新作について語るポッドキャストでは非常に居心地が悪そうだ。一方、オックスフォードでは、学生を前に、普段は皮肉を口にしがちな彼が、これまでになく素直かつ真摯に語っていて、非常に貴重だ。そして地下鉄でのインタビューでは、友達と話しているようにかなりリラックスしている。ジュリアンの三つの異なる表情が見られる。1)ビル・バーの『Monday Morning Podcast』で新作を語る
映像はこちら。ジュリアンはツアー中で、デンバーにいると話していた。ツアーバスの中から出演している。
以下インタビューの要約。――バンドを始めてもう20年以上ですが、どういう時に「そろそろ何か新しいものを出したほうがいいんじゃない?」って話になるんですか?「たぶん、銀行口座のお金がなくなった時だね」――お互いの残高を比べるんですか? 「今いくらまで減った?」って(笑)。「いや、いつもなんとなく感覚なんだと思う。『そろそろツアーをやるべきかな』ってなって、ツアーをするなら、その前にアルバムも出したほうがいい、という感じで。まあ、実際はそこまで夢のない話でもないけどね。俺は常に曲を書いているし。今回は、リック・ルービンが関わっていたから、彼とやれる機会があったというのも大きかったと思う。俺がたくさん曲を持ち込んだ。でも、かなりジャムもしたよ。リックから、とにかく延々とジャムをしてほしいと言われたから。最初は5、6曲くらいから始めたんだったかな。毎日、2、3時間くらいただ演奏し続けた」――どこで演奏していたんですか?「コスタリカ。毎日2時間くらい演奏していた。そこで生活しながら、レコーディングしていたんだ。リックがコスタリカにいて、『こっちに来たほうがいい』と、俺たちを招待してくれたんだ。そこに家があって。うん、かなりすごかったよ。本当に現実離れしていた。文字どおり、山の頂上にあるインフィニティ・プールの横で、屋外でレコーディングしながら酒を飲んでいたんだ。リックがいて、俺たちを指揮したり、全体をまとめたりしていて。最高だったよ。楽しかった。」
――確かAC/DCも『Back in Black』をカリブ海かどこか(*バハマ)でレコーディングしたんですよね。あのアルバムを聴いても、そんな場所で作られたとは分からないですが。「そうだね。まあ、太陽の光が少し入り込んでいるのが聴こえるかもしれないけど。でも、ほとんどの曲はその前にニューヨークですでに作業していたからね。とはいえ、音楽をどこでレコーディングするかは、一般的にそのサウンドに影響すると思うよ」――B面2曲目の“Going Shopping”が、僕には、社会から離れたいわけではないけれど、もう社会に馴染めなくなって、田舎へ向かおうとしている人物の歌に聞こえたんです。「そうだね。特にMVを作ったことで、曲の意味が少し変わったというか、別の意味合いを持つようになった気がする。必ずしも消費者が悪いということではないんだけど、ある種のことに目を向けずにいるというか……。曲の意味の話に戻ると、確かに俺には、街を離れて暮らしていた時期があったんだ。以前の曲でもそういうことを書いていたし、たぶんそれが無意識のうちに、また出てきたんだと思う。つまり、企業や消費主義そのものが悪いというより、それに伴って、どこかで嘘をつかれているという感覚がある。それが暗い部分なんだと思う。少し重いメッセージを伝えようとはしているんだけど、それを、あまり深刻で陰鬱になりすぎないように、軽くて共感しやすい形で表現しようとしているというか」――アルバムのレコーディングには、どれくらいかかったんですか?「実際の録音自体は、たぶん1、2か月。でも、世に出すまでには3年かかった」――アルバム作りの最後って、どんな感じなんですか?「よし、今日が最終日だ。楽しもう。これが最後の曲だ」と録り終えて、そこで全部を締めくくるような感じなんでしょうか。「いや、最後はそこまできっちり整理されているわけじゃないんだ。最後のことで覚えているのは、アルバムのラスト曲(“Tyrants of the Mellow Moon”)を最終日の夜に録音したことかな。ジャムみたいな形で生まれた曲だった。あれはたぶん、いちばん好きな瞬間だった。最後に魔法のようなテイクが録れた、という雰囲気があったんだ。でも全体としては、曲はどれも完全にバラバラな状態で、あとから組み立てる必要があった。だから、録音した数か月が終わった時点で、完成したという感覚はなかった。映画を撮って編集するのと同じだよ。撮影が終わって、『ああ、今までが楽な部分だったんだ。これから戻って……』となるような感じ」――アルバムを聴いて、いちばん好きだったのはアルバムの最後の2曲です。「ありがとう。最後の2曲について言えば……最後の4曲には、コスタリカの空気が少し音楽に染み込んでいると思う。それからラスト曲は、あの最後の夜に生まれた曲だった。だから、その2曲はどちらもコスタリカで自然発生的に生まれた曲なんだ」――このアルバムのレコーディングを終えたのはいつで、そこからどれくらいでツアーが始まったんですか?「いや、もう本当に……ミックスして、議論して、マスタリングして、という感じだった。ツアーが始まる1か月くらい前まで、ほとんどミックスをしていたと思う。それでアルバムの発売が延期されたんじゃないかな。とにかくずっとミックス作業が続いていて、かなり急いで仕上げたんだ」――バンド内で意見がぶつかる時も、もうお互いをよく知っているから、「これはこういう言い方をしないほうがいいな」と分かるものですか? 「うん。バンドのほとんどのメンバーとは(笑)、ずいぶん進歩したと思うし、今ではかなり敬意を持って話し合えるようになったと思う。お互いにどう話せばいいのか分かっているというか」――バンドセラピーせずに済んだのは、よかったですね。「確かに。赤の他人の意見で物事がひっくり返るのは少し変だけど、でも、どの家族にも、仲裁役みたいな人がいた方がいんじゃないかとも思うよ」“Going Shopping”のMVは、ポール・サイモンの“You Can Call Me Al”のオマージュ。
さらに、少し前には“Fall Out of Love”をテレビで披露している。
2)オックスフォード・ユニオン。コーチェラ2週目の最後に政治的メッセージの強い映像を流した理由7月初めにオックスフォード・ユニオンに出席したジュリアンは、まず「シオニズム」についてのスピチーを行い、その後、Q&Aに応じた。その中で、コーチェラ2週目の最後に流した映像について聞かれている。また、ミュージシャンとして政治的発言をすることの複雑さや、それをいかに注意深く考えているかについても語った。そこにも、ジュリアンのいつになく素直で誠実な姿勢が表れている。
映像はこちら。
以下、Q&Aの一部を紹介。ーーコーチェラでのステージについて聞きたいです。“Oblivius”を演奏している途中で映像に切り替わり、大きなスクリーンにはCIAによる介入の数々が映し出され、最後にはガザの大学が爆破される場面が流れました。なぜあの演出を選んだのか、教えていただけますか? また、実際に行った後、どのような反応がありましたか?「インフルエンサーたちが喜びそうな、話題のネタが欲しかったんだよ」(会場)ーー(笑)。「いや、冗談。もともと、あの映像は“Oblivius”のために作ったものだった。当時、義理の父から『これは公開しないほうがいい。こんなものを出したら、連中が君を狙いに来るぞ』と言われたのを覚えている。でも、その後、世界のほうが少しずつこちらの認識に追いついてきたというか。俺たちも、何かをやろうという話をしていたんだ。コーチェラは、とにかく世界中の視線が集まる特別な瞬間だからね。つまり、みんなが注目している瞬間なんだから、単に自己満足で、目的もなく終わるようなことではなく、何か意味のあることができないかと考えた。それで、すでにあの映像があったから、使おうという話になった。最初は、2週目のライブの最後に流して、そのまま“マイクを置いて退場”みたいにしようかと考えていた。映像には飛行機から爆撃する場面もあるから、『観客をかなり落ち込ませるかもしれないし、ブーイングされるかもしれない。だったら、流してそのまま帰ろう』という感じだったんだ。あの映像の後に、『それでは次は明るい曲です』なんて演奏して、客席ではみんなが泣いている、というのも変だからね。でも、結果的にはすごくうまくいった。正直、みんながそれほど気に留めるとは思っていなかったんだ。音楽でも政治でも、あるいは政治的な表現でも、何が人々の心をつかみ、広がっていくのかは本当に分からない。面白いものだよ。だから、実際にはそれほど深く考えていたわけではない。もちろん、やることには興奮していたけど、誰も気にしないだろうと思っていたんだ。反応はよかったよ。たぶん、世界の側に受け止める準備ができていたんだと思う。あの映像を作ったのは10年くらい前だからね。当時、マーティン・ルーサー・キングについてかなり読んでいた。それで、映像に入れたことはどれも否定しようのない事実だったんだ。議論の余地があるような内容ではなかった。仮に議論の余地があるものについては、映像の中でも『疑惑がある』とか、そういう書き方にしていた。ある事例では、信頼に足る告発はあったけれど、証明まではされていなかった、と明記していたと思う。ともかく、重要なのは、否定できないことだけを伝えることなんだ。細かい議論の泥沼に入っていくことではない。友人が以前、こう言っていた。『三文以上話したら、みんなが怒鳴り始めて、攻撃してくる』って。だから、ほとんど何についても、まともに話せないような状況なんだよね。波風を立てずに生き延びる唯一の方法は、何も言わず、何もしないことになってしまう」ーーミュージシャンとして、政治的な見解をより率直に表明することは、時間とともにやりやすくなりましたか? それとも難しくなったと思いますか?「それは微妙なバランスが必要だよね。大きな政治的変化や運動が起きるのは、それが水面下で高まり、本当に必要とされている時だと思う。でも、無理やり押しつけると、鬱陶しがられて、誰も聞きたがらなくなる。だから、行ったり来たりする。強く押し出す時もあれば、少し引く時もある。たとえばThe Voidzでは、かなり政治的なことをやっていたけど、みんなから『こんな話は聞きたくない』という反応が返ってきた。それで、『分かった』となる。結局、人々の注意を引けるちょうどいいバランスを探しているんだ。昔から音楽も同じだったと思う。芸術的な誠実さを持つものを作りたい。でも同時に、世の中に広まり、人を刺激し、前向きな影響を与えられる程度には、人気のあるものにもしなくてはいけない。だから、その中間点を見つけるのは、いつだって難しい。それから、『人は発言するべきか』という質問に答えると、そもそも大半の人は、実際に何が起きているのかをよく分かっていないと思う。俺たちは精神的に、ものすごく操作されている。携帯を手に取れば、表示されるニュースの選択肢まで決められている。俺も自分が本物だと思えるニュースにたどり着くには、ほとんどiPhoneをハッキングするようなことをしなくちゃいけない。人々は、四六時中くだらない情報を浴びせられている。だから、それは本人たちの責任ではない。結局、必要なのは情報を伝えることだけだと思う。そして、実際に何が起きているのかを理解していないなら、それについて発言することまで仕事にする必要はない。エンターテインメントは、ただのエンターテインメントであってもいい。もちろん、政治的な映画や芸術作品もたくさんある。だから、清掃員であれ、ミュージシャンであれ、何か言いたいことがあるなら言えばいいと思う。企業から資金提供を受けず、独立して発言している人なら、俺は誰の話でも興味がある。俺が興味を持てないのは、企業から金をもらっている人だけだ」――あなたとザ・ストロークスは、現代音楽において最も影響力のある存在のひとつです。たとえばアークティック・モンキーズのアレックス・ターナーも、「ザ・ストロークスの一員になりたかった」と語っています。ジュリアン・カサブランカスという人間として、自分のレガシーをどのように捉えていますか? また、あなたの影響を受けたアーティストやバンドの中で、特に誇らしく思っている人たちはいますか?「好きなのは……そうだな、ギースの“Cobra”という曲は素晴らしいよ。ただ、彼らはザ・ストロークスというより、バンドのSuicideの影響の方が聞こえてくるけどね。自分がどういう立場にいるのかを、そういうふうに考えようとはあまりしないんだ。でも、いつも次のことをやろうとしている。自分では、まだ完全には目標に到達できていないと感じているし、たぶん、その感覚が俺を前へ進ませ続けているんだと思う。だから、うん……競走馬みたいに遮眼革をつけて、前だけを見ているほうが安全なんじゃないかな」――すべてが終わった後、人々にひとつだけ覚えていてほしいことは何ですか? ジュリアン・カサブランカスとは何者で、何を残した人だったのかと振り返った時に。「うーん、そうだな。世の中に前向きな影響を与え、自分にできる限り、不必要な人間の苦しみを減らした人として覚えてもらえたらいい」以下学生とのQ&A、一部紹介。
ーー歴史上の著名な政治家の中で、あなたの社会観や政治観、あるいは音楽活動に最も大きな影響を与えた人物は誰ですか?「聞いてくれて嬉しいよ。自分に影響を与えたかどうかは、まだ分からないけど、ここ1年くらい、ユリシーズ・グラントに夢中なんだ。本当に、ものすごく深くハマっている。彼は最高に格好いいと思う。最高の大統領だったし、いつも謙虚で、過小評価されてきた人物だった。苦労を重ね、常に見くびられていたのに、最終的にはアメリカに最も進歩的な時代のひとつをもたらした。彼は、ほとんど一人で南北戦争を勝利へ導いたようなものだ。そしてリンカーンが暗殺された後、南部で何千人もの黒人が公職に選ばれるような時代を切り開いた。KKKも打ち破った。それに、先住民に対して敬意を持っていた最後の大統領のひとりでもあった。少なくとも彼の大統領在任中には、ああいう大規模な残虐行為はそれほど起きず、比較的平和な時期だった。ただ、任期の終わり頃には、シッティング・ブルやリトルビッグホーンの戦いのこともあって、少し汚点が残った。でも、彼はカスターのことを嫌っていたと思う。ともかく、グラントは偉大な人物だったと思うし、もっと称賛されるべきだよ。彼にはエゴがほとんどなかった。それなのに俺たちは、ナポレオンみたいな自己愛の強い嫌なやつばかりを英雄として称えるからね」ーー政治に関する本、ポッドキャスト、ドキュメンタリーの中で、誰もが読むべき、あるいは観るべきだと思うものは何ですか?「まずポッドキャストだけど……俺にとっては、ポッドキャストってすごく不思議な存在なんだ。ある分野の専門家なら別だけどね。ひとつのテーマに人生を捧げて、幅広い知識を身につけてきた人の話を聞くのは好きだよ。でも、ただ人が集まって座りながら、『そういえば、あれってどういうことなんだろう?』『分からないけど、たぶんこうじゃない?』みたいに話すものは、どうして人気があるのか、ずっと理解できなかった。だから、クリス・ヘッジズを薦めるかな。最近の彼の番組は、イランのことなど、本当に勉強になる。まあ、イランについて本当のところを誰が分かっているのか、という話ではあるけど。本では、比較的早い時期に関心を持つきっかけになった一冊で、コーチェラの映像スクリーンに出した情報でも引用した『エコノミック・ヒットマン――途上国を食い物にするアメリカ』がある。もう一冊、お気に入りは、オリバー・ストーンが共同執筆した『オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史』。テレビシリーズもあるけど、本のほうがずっといいと思う。指導者たちの手紙や実際の発言を読むと、彼らがどれほど常軌を逸していたかが分かるから。学校で教わった歴史と、実際の記録から分かることの違いに、本当に衝撃を受ける。ただ、この本も『これこそが唯一の真実だ』と主張しているわけではない。両方の見方を考慮して、自分で判断してほしい、という姿勢なんだと思う。やはり、自分で学ぶことが大切なんだ。まず、この二冊がいいと思うよ」ーー今年、アメリカは建国250周年を迎えます。それが何を意味するのか、いろいろと議論されていますが、あなた個人にとって、何か特別な意味はありますか?「トランプが250周年をあまりにも大げさに扱っているから、すっかり政治的なものにされてしまったというか……。俺自身は、正直、それほど深い思い入れはない。ただ、アメリカの理念は、理論上は素晴らしいと思う。少なくとも俺が育ちながら抱いていたアメリカのイメージはね。特にニューヨークにいると、世界中からいろいろな人がやって来て、アメリカ人になる姿を目にする。そういうアメリカのビジョンだよ。でも、そのビジョンは、あの“建国250周年を大騒ぎしている人”のような人たちによって、今まさに壊されようとしている。俺が好きなアメリカ人は、フレデリック・ダグラスや、先住民の指導者たちだね。素晴らしい人が何人もいる。欠点はあったとしても、ルーズベルト家の人々もそうだと思う。彼らは、自分が正しいと考えたことに基づいて決断できた、最後の指導者たちの一部だった。それから、トマス・ペインはイギリス出身だけど……。ともかく、称えるべきアメリカ人は大勢いるし、前へ進め、現実のものにしていくべき理念もたくさんある。でも、本当のところ、その理念はまだどこにも実現していない。闘いは今も続いているんだ。俺たちは、どのように育てられ、どれほどプロパガンダを浴びせられてきたかのせいで、それに気づいていない。でも俺は、今も革命の時代にいると思っている。初期の革命は、啓蒙思想に基づいたものだった、とか言われるよね。でも、それから200年が経ち、彼らは新しい方法ですべてを奪い返すやり方を見つけた。特に広告や、人々に影響の与え、騙す方法を通じてね。だから、さっき話したことにもつながるけど、何が起きているのかを自分たちの目で確認できる、小さな共同体規模の民主主義に戻る必要がある。そして、遠く離れた場所から、誰にも気づかれずに人々が殺されるような状況を止める必要がある」ジュリアンが登場して最初に行ったスピーチ
約20分に及ぶ長いスピーチで、現代の政治的対立の根底には、言葉が本来の意味を失っているという問題があると語っている。「政治を語る時に使われる重要な言葉は、ほとんど意味を失っていて、僕たちの議論を、怒りを煽るだけの終わりのない堂々巡りに閉じ込めている」と指摘し、“自由”“民主主義”“資本主義”“シオニズム”といった巨大な概念を、より具体的な言葉に分解する必要があると訴えている。
そのうえで、十分な情報を得た市民が政治に参加する「デモクラシー・プラス」を提唱。政治家の清貧、メディアの資金源や虚偽を明示する制度、徹底した討論とファクトチェック、ロビー活動の透明化、税金の使途を市民が選べる仕組みという五つの案を示し、「このいまいましい民主主義というものを、初めて本気で試してみよう」と呼びかけた。さらに、現在のイスラエルとパレスチナをめぐる議論についても、“シオニズム”という一語に異なる立場を押し込めるのではなく、イスラエルの存在を支持する立場と、入植地拡大や“大イスラエル”構想を進める「拡張主義」を区別すべきだと主張。最終的に彼が訴えたのは、宗教、人種、国籍、イデオロギーを超えた普遍的な基準を共有し、十分な情報とより正確な言葉によって社会を変えること。「力はまだ僕たちの手の中にある」と語り、理念に基づく非暴力の蜂起への希望を表明してスピーチを締めくくっている。3)ポッドキャスト『Subway Take』に出演。これは、NYの地下鉄内で「提言」を行うYouTube番組
ジュリアンもいくつかの「提言」を行い、さらにアメリカについてなども語っている。ジュリアンの提言:「保守派と進歩派が結集し、企業に依存しない合意型ポピュリスト政党を作るべき」「すごく退屈な話に聞こえるかもしれないけど、俺は本気で、保守派と進歩派が手を組む必要があると思っている。企業に支配されない、合意形成を重視するポピュリスト政党をつくって、本当の敵である大富豪集団の思惑と闘うんだ。中絶や銃をめぐる問題については、あとで争えばいい。今はまず、腐敗をなくすことと、民主主義に集中すればいいと思う。それから……階級だね。階級の問題なんだ。こういう話を短い『提言』でまとめるのは難しい。実際には、もう少し複雑だから。明らかに、“左対右”ではなく、“上対下”の問題なんだ。ただ、人を傷つけないのであれば、金持ちになること自体は認められていいと思う。必要なのは基本的に、個人の富と、国家の公的権力を分離することなんだ。たとえば、億万長者になりたいなら、政治に対して持てる影響力は、ほかの人と同じように投票することだけにする。人に金を渡して影響を及ぼしたり、新聞社を所有して世論を動かしたりすることはできないようにする。つまり、富裕層を政治から締め出すような制度が必要だと言っているんだ。でも、単純に“金持ち対貧しい人々”の闘いにすればいいということではない。それは過去にもやってきたけど、うまくいかなかったし、ナポレオンのような人間を生み出すことにもなった。人々は、もう自分たちが何をめぐって争っているのか分からなくなっていて、ただ混乱しているんだと思う」それからもうひとつ。企業系ニュースを見るのをやめなくちゃいけない。企業系ニュースは、今の社会に起きた最悪のことのひとつだと思う」そのほか、いくつか質問にも答えている。――長くクールな存在で、活躍し続ける秘訣は何ですか?「さあ、分からないな。俺はかなり物事を考えすぎるタイプだし……。自分に厳しくいることかな。きちんと準備して、努力して、格好いいことをやろうとする。いい人間でいる。そして、ただ成功したいとか、手っ取り早く結果を出したいということだけを目指さない。そういう姿勢だと思う。芸術的には、無理に……いや、今の時代に、どうすれば人気者になれるのかは、俺にも分からない。ただ、クリエイティブな仕事を長く続けるという意味なら、自分が面白いと思うものを追いかけることだと思う。半分は、自分がいいと思うものを作ること。もう半分は、人を刺激し、社会やそこに生きる人たちに前向きな影響を与えられるものを作ることかな。うん、そういうことだと思う。……『社会に影響を与えたい』なんて言うと、ちょっと変に聞こえるな。ごめん」――希望はあると思いますか?「どのくらい先のことを考えるかによるね。たとえば、500年後にユートピアが実現するという話なら……とは言え、60歳は少し早すぎるかもしれない。俺は、悲観的だけど、最終的には良くなると楽観している。それが今なのかは分からない。でも、今日かもしれないし、明日かもしれない」――では、これからの4年間は、このまま下がっていくんでしょうか。それとも、少しは上向く瞬間がありますか?「まあ、上がる前には、一度下がらなくちゃいけないこともあるからね。正直、この間そのことを考えていたんだ。今は、何かが目覚めつつある時期なんじゃないかと思う。ただ、もう以前の“普通”に戻ることはないと思う。秘密はもう明るみに出たし、魔法のランプから精霊は出てしまった。トランプが何かを解き放ったんだ。俺たちはまだ喪に服しているような状態なんだと思う。みんなまだ動揺している。まるで『マトリックス』の中にいるように、『一体どうなってるんだ?』『こんなことが本当に起きているなんて信じられない』と思っている。まだそこから抜け出せていない。でも、いずれは“選ばれし者”になるかもしれない」――ネオですね。「そう。あるいは、『よし、格好いい革のジャケットを着て、あいつと闘おう』となるかもしれないけど……それこそが、アメリカという国の本来の魅力なんだ。誰でもアメリカに来ることができる。来たいと思ってやって来れば、その人はアメリカ人になれる。だから今、みんながアメリカを嫌っているような状況になっているのが悲しいんだよね。アメリカの理念そのものは素晴らしいから。少しダサいけど、オリンピックを観ていると、あらゆる人種や背景の人たちがいて、その全員がアメリカ代表だったりする。ほかの国はもっと均質に見えることもある。俺は、そこに誇りを感じるんだ」